先日、社員旅行から帰ってきたときに、旅行カバンの中に入れた覚えのないものが入っていたという方から相談を受けました。この方は同じ会社の社員20人と一緒に、静岡県の熱海温泉に2泊3日のゴルフ旅行へ出かけました。これは社員の慰労のために毎年1回行っているこの会社の恒例イベントです。もう10年以上も続いていて、ゴルフコースも宿泊するホテルも毎年決まっています。この人が持ち帰ってきたものは、ホテルの名前の入った“古ぼけたライター”です。最近ではタバコを吸う人はめっきりと少なくなりましたから、ノベルティーにライターを作る会社も減りました。しかし、昔はホテルに宿泊すれば、灰皿の中には必ず、ホテルの名前の入った「ライター」か「マッチ」が入っていました。その類のライターです。別に高価なものではありませんし、この方はタバコは吸いません。ですからそのままゴミ箱に捨てても良いのですが、手にした時から何か違和感を覚えて気になっていたのです。そこでこの慰安旅行へ出かけた全社員に「このライターに見覚えはないか」この人は尋ねました。しかし、誰一人、このライターを知っている社員はいませんでした。

 そして社員旅行から戻ってから、この人は体調を崩していました。会社を休むほどでなありませんが、小さな眩暈がいつも続いて、体も熱っぽいのです。そのせいか仕事にも集中できなくて小さなミスが続いていました。その状態はこの人の奥さんも同様でした。疲労感や倦怠感は家族に感染するものではないのに、奥さんも同じ時期から体の不調を訴えていたのです。

 

そこでこの人はライターに書かれていたホテルを調べました。するとそのホテルは伊豆稲取にある観光ホテルでした。熱海も伊豆稲取も伊豆半島の東海岸にある温泉町です。しかし、距離にすると47キロ、電車で移動しても1時間20分も離れているのです。たとえば伊豆を旅行している観光客が、伊豆稲取でそのホテルに泊まり、そのライターを持ち帰ったとします。そして次に今回のホテルに泊まり、ロビーでタバコを吸っているときに、そのライターを使ってそのままロビーに置き忘れたとします。そしてこの人がその後に、ロビーでタバコを吸ったときに何気なくこのライターをポケットに入れたとすれば、この人が伊豆稲取のホテルのライターを持ち帰ったとしても不思議ではありません。この人は自分の記憶を辿りましたが、確かにロビーの一角には喫煙コーナーが設けられていたのです。

 しかし、調べたところ、その可能性は無くなりました。ライターに書かれていた稲取のホテルは、10年以上も前に廃業していたのです。しかもインターネットで検索すると、そのホテルの名前は思わぬジャンルにヒットしました。それは“静岡県の心霊スポット”の中で取り上げられていたホテルだったのです。その画面を見た瞬間、この人は思わず、このライターを遠くへ投げました。自分の近くにこのライターがあることに恐怖を感じたからです。

 この人は、インターネットに書かれた“このホテルが心霊スポットになった理由”を読みました。するとこのホテルでは「殺人事件」があったと書かれていました。そして被害者の霊がしばしばホテル内に出ると噂になって、お客さんが引いてしまったのです。そのためホテルは全面改装をしようとして、一時休業にしました。しかし、休業期間中も心霊現象が数多く目撃されたため、再開できずに廃業したのです。その人はそんな“いわくつき”のホテルのライターをどうして自分が持ち帰ってしまったのか。それが気になって私に相談してきたのです。

 私はこの人に答えました。

「古いライターですから、このホテルの営業当時にこのライターを持ち帰った人が、社員旅行で止まった熱海のホテルに宿泊して、このライターを置いていかれたことは間違いないでしょう。あなたの霊的な波長とこのライターにこもっている念(怨念)の波長がたまたま合ってしまったことで、あなたは無意識のうちにこのライターをポケットに入れて、その後も旅行カバンに入れて大切に持ち帰ってしまったのです。そして、家に持ち帰ったこのライターの怨念の影響で、あなたと奥さんは体調不良になってしまったのです。まずはお二人の体に入り込んでいるこの怨念を抜いて、あとはこのライターを処分すれば、それで本来の自分たちに戻るでしょう。このライターは私が処分しますから、事務所まで郵送してください」

私はお二人を除霊した後で、送られてきたライターにこもる念を昇華さました。そして怨念の抜けたこのライターは、焼却して処分したのです。

 


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