私は相談者の目を見ながら質問に答えました。

「倒産するのは会社設立後2年ぐらいになるでしょう。ただ、どうして会社が倒産することになったのか、その理由はわかりません。と言うよりも、その理由は意味がありません」

正直にそのようにお答えしました。

「そうですか、わずか2年ですか。でも理由が分からないのに、どうして会社が倒産することが分かるのでしょうか。その点が私にはどうにも納得ができないのですが…」

相談者はそう言って怪訝そうに私を見つめました。私は理由が分からなくても会社が倒産すると答えたことの意味を相談者に話しました。

「例えばあなたが経理を任せたスタッフに不正計上を繰り返されてお金を持ち逃げされたとします。私が今、そう伝えたとしたら、あなたはきっと経理を任せる人間をよくよく吟味するとか、その人の仕事をさらにチェックする人間を入れたりして、不正な経理ができないような体制を作るでしょう。そのことによってきっと経理の問題は解決されるでしょう。しかし、そうなると2年後に、大きな取引をしていた一番の取引先が倒産して、売掛金が焦げ付いてしまい、その影響で支払いが遅れて信用を失うことになるかもしれません。私がもし、そう伝えたら、あなたはきっと後払いで1社だけと大きな取引を行うリスクを感じて、お得意様を分散させて、リスクを回避させると思います。そうなると売掛金の問題はきっと解決されるでしょう。でもこの問題が回避されても、2年後にあなたの会社が下請け会社に依頼して作らせ製品に、不良品が大量に出回ってしまい、それを販売したあなたの会社は信用を失い、市場から締め出されるかもしれません。

 私が感じている世界は時間が過去~現在~未来と時系列に並んでいません。つまり、理由や原因の先に結果があるわけではないのです。私が先に結果を感じてしまったとき、理由はその時点で現実化しやすいものが単にピックアップされているにすぎません。一つの原因を回避したとすれば同じ結果につながる別の原因ができるだけで結果は変わりません。目的地へ向かるルートが替わるだけで辿り着く先は一緒なのです」

私の説明に相談者はようやく腑に落ちたように肩を落としました。こんなとき私はいつも”背中を押してあげられなくて申し訳ない”と思います。頑張ろうとしている人の梯子を外すようで心苦しいのですが、それでも無理に進んで人生を台無しにするよりははるかに良いのです。私は自分の感じた未来を正直に伝えて、最終判断は本人にゆだねればよいと思っています。

 

こういったケースは他にも数多くあります。大好きは相手と入籍して、幸せな新婚生活の絶頂にある二人に1年後に離婚する未来を伝えたこともあります。希望の大学に合格のために寝る間を惜しんで勉強している受験生に、その学校とはご縁のないことを伝えたこともあります。資格試験、入社試験、恋愛、健康など、人生では常に自分の望んだ未来が手に入るわけではありません。頑張れば手にできる未来だからこそ、はじめて「頑張ってください」と言って背中を押すことが出来るのです。頑張っても手にできない未来を感じていながら、思わせぶりに応援するような真似はできません。ですから多くの場合、私は第1希望の未来に辿り着けない場合は、第2希望、第3希望へ進む道も探し出してお伝えしています。第1希望の未来を手にできる人はほんの一握りです。それはとても幸せな人生だと思います。でも、その未来が獲得できなくても、人は幸せに生きていくことはいくらでもできるのです。私のアドバイスによって皆さんが幸せな未来へ少しでも近づくことが出来れば思いながらいつも回答しています。

 


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