霊の世界は元々時間や空間の概念がありません。ですから本来なら理由や原因の後に訪れるはずの“結果”が、先に訪れて、理由や原因はその時点で現実化しやすいものが単にピックアップされていたということが時々起こります。たとえば新しく会社を立ち上げる方から、“事業の行く末を観てほしい”と頼まれたことがあります。私はその人の霊的な波長を感じ取りながら、新しい事業がこれからどのように展開されていくのかを観ました。すると会社設立後、わずか2年でその会社は倒産していました。私の頭には、落胆して苦渋の表情を見せるその方の顔や支払いのために金策に奔走しているその方の様子が何度も頭をよぎったのです。約束の支払いが滞った取引先からは、一刻も早く約束の代金を支払うように矢の催促がかかっています。相談者は、支払いのお金を用立てるために、公的な制度融資~金融機関を何度も訪れています。それでもわずかな融資しか受けられず、借金で借金を返済する自転車操業に陥っています。そしてついには高利の街金やヤミ金にも手を出してしまいました。こうなると金利が急速に膨らんでいくだけで、一生かかっても返済することはできません。その結果、相談者は高利貸の督促に耐え切れなくなり、自殺を考えながら行方をくらまします。私にはそんな悲惨な未来ばかりが頭に浮かんでいたのです。

 

私はこの方に答えました。

「申し訳ありませんが、あなたが会社を立ち上げた場合、私には幸せな未来は感じ取れません。設立した会社は短期間で倒産して、借金を抱えたあなたには非常に悲惨な未来が待っているように感じました。ですから会社の設立は思いとどまった方が良いと思います」

 

私の回答を聞いた相談者は、かなり気持ちが萎えてしまったようです。それというのはこの方は10年以上前から時間をかけて、将来の独立を目指して着々と準備を整えてきたからです。たとえば会社で上司とぶつかって勤め人に嫌気が差して辞表を叩きつけたとか、勤務先の会社でリストラされて、会社勤めに見切りをつけて独立を思い立ったわけではないのです。そういうタイミングで独立を決めてもほぼ9割以上は上手くいきません。何かを始めるときにはそれを実行するタイミングが重要です。会社を設立するのであれば、まずは設立資金と設立後しばらくの間の生活資金を用意しなければなりません。そして会社の仕事が上手く回る見込みがあるのかどうか、マーケティングをして冷静に状況を分析することも必要でしょう。そして自分を応援してくれる人脈がどの程度あるのかどうか。人脈がないならそれをある程度作ってから独立するべきなのはいうまでもありません。あとは自分の手足となって働いてくれるスタッフを確保できるのかどうか。そして商材となる商品の仕入れや販売のルートはどうするのか。そして会社を経営していく上では、その業界の現状をリアルに把握するための情報も必要です。よく言われる言葉ですが、“人・物・金・情報”の4つの要素が事業の成功には不可欠です。その準備ができた時が会社を設立するタイミングになります。つまり、上司との人間関係や会社のリストラは、事業の成功とは全く結びつかないものです。自分の勝手な都合で独立しても、新規事業が上手く回っていくわけがないのです。こういったことを理解した上で、準備万端で独立を決意した相談者だけに、私に背中を押す言葉をかけてもらいたかったのです。しかし、私としても自殺を考えて高跳びするような状況を感じているのに、この方の背中を押すわけにはいきません。

 

最終的な判断はもちろん本人自身で決めることです。私の言葉は、あくまでも“アドバイス”としてお伝えしていることですから、それにしたがう必要はありません。まれに自分の求めている回答と違うアドバイスを私から聞いたときに、どうしても自分の望む答を私から引き出そうとして、「どうしてですか?」を何回も繰り返す方がいます。そして議論をしてでも思い通りの答えを求めてくる人も過去には2~3人いたように思います。しかし、私からするとそれは無意味です。私は私の感じたことを率直にお伝えしているだけですので、そもそもそこにロジックに敵う理由はありません。そして私が感じた未来の方へ進みたくなければ、人生の主体は言うまでもなく自分自身なのですから、ご自身の思った通りへ進んで行かれれば良いのです。そして今回の相談者も、まるで諦めきれないように私に質問してきました。

「今回の独立は自分なりに準備を積み重ねて万全の状態で決意したものです。短期間と言うのは、いったいどれくらいの期間で、どのような理由で会社は倒産してしまうのでしょうか。見える範囲で構いませんので教えていただけないでしょうか?」

そう言って私と目を合わせました。(2)へ

 


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