先日、自分の夫が“突然、自殺しようとした”という妻から、相談を受けました。それも話を聞いてみると、ご主人は仕事や家庭生活に大きな不満を抱えていたわけではなく、ストレスをため込んだり、鬱症状が出ていたわけでもありません。肉体的にも健康で何ら自殺をするような動機は無かったのです。しかし、友人夫妻を家に招いて、四人で楽しくパーティーを開いていた最中に、ご主人は突然スタスタとベランダへ向かって歩いて行ったあと、6階のベランダの手すりに体を載せて、突然飛び越えようとしたのです。部屋の中からその様子を見ていた妻は驚いて
「ヤメテーッ!」と大声を出しました。この叫び声を聞いた友人の夫とともに、ベランダの夫へ走り寄り、二人で後ろから体を押さえて、室内に引き入れました。そして床に倒れ込んだ夫を見ると、目は宙を泳いでいて口元は笑っていたのです。妻は「しっかりして!」と叫びながら夫の頬を何度か叩きました。するとまるで目を覚ましたように、視線は元に戻り、「痛い、痛い、痛てえなあ!」と夫はしゃべったのでした。
妻は元に戻った夫を問い詰めました。
「あなた、いったい何やってるの?大丈夫?何なの?死にたいの?」
妻の言葉に夫は答えました。
「何で?別に死にたいわけないじゃん、何言ってるの?」
そんな夫に妻と友人は今、目の前で起きたことを説明しました。そして妻は改めて夫に尋ねたのです。
「ねえ、何やってたの?どうなってるの?ベランダの塀を越えないように二人で体を引っ張ったけど、かなり強い力で塀を乗り越えようとしてたんだよ、本気でやってたからね」
すると夫はバツが悪そうにボソボソと話しました。
「部屋の中で酒飲んでて、少し酔ってきたから、頭を冷やそうと思ってベランダへ出たんだよ。天気は良いし、風も気持ちよいから、いい感じで外を見てた。そうしたら地上で20歳ぐらいの若い女の子が、こっちを見ながら手を振ってたんだよ。だから俺もその子を見ながら笑顔を返した。その子はオレの方を見て笑顔で手を振りながら叫んだんだ。“気持ちいいよ、大丈夫だよ、一緒に行こう!”ってね。そしたらいきなり二人に体を抑えられて部屋の床の上に押し倒されてたんだよ。オレも何がどうなっているのか良く分からないよ」
ご主人によると、ベランダから飛び降りようとしていた部分は完全に記憶から抜け落ちていたのです。しかし、ご主人はもし、二人が体を押さえつけていなければ、間違いなくマンションの6階から飛び降りて命を落としていたのです。私は奥さんに話しました。
「こういうことを“魔が差す”というのです。ご主人の霊的な波長が、おそらく飛び降り自殺をしたその若い女性の霊とピタリと合ってしまったのでしょう。時間とか空間には波が合って厳密には常に揺れ動いています。その波形が悪い意味で合ってしまったとき、パラレルワールドと呼ばれる別世界や霊の住む世界へ引き込まれてしまうことがあります。その自殺者の霊は、成仏できずに現世にとどまっている中で、強い孤独を感じていたのでしょう。そして誰かあの世で一緒に苦しむ“道ずれ”が欲しくなったのです。そしてご主人を連れて行こうとして呼び込んだのです。こういったケースはまれに起こります」
私の話を聞いた奥さんの顔に不安が広がりました。
「これから主人は大丈夫でしょうか?また、同じようなことをしてしまう恐れはないのでしょうか?」
私はすぐに答えました。
「可能性はあります。ご主人と波長の合った自殺者の霊は、現時点でまだ現世にとどまっています。ということはまた何かのタイミングが合えば、ご主人とつながって、ご主人を霊の世界へ引き込むことは十分に考えられます。自殺者の霊は、おそらくこの土地に関係しているものですから、再びこの場所に現れる可能性は高いのです。ですから当分の間は、ご主人は絶対にベランダには立たせないでください。奥さんはこの霊とは波長が離れていますから、ベランダに出ても何ら問題はありません。しかしご主人は危険ですから絶対にいけません」
私は霊に対抗できるご主人の波長に合ったパワーストーンに、霊に対抗するマントラやパワーを念じ込めて奥さんに渡しました。
「一度、霊の影響を受けた人は、他の霊も含めて再び霊と同調しやすくなります。ですから外出時は、このパワーストーンをお守りとして、服のポケットやバッグに入れてご主人に携帯させてください」
そう伝えたのです。(2)へ続く。