まずはこの夢を見た後に、右肩に出ていた赤黒い痣が出なくなりました。恐怖心を抱く夢のリアルさは相変わらずで、ずっと同じ夢が繰り返されています。ただ、肩にできる痣は、かなりの痛みを伴いましたから、それが出なくなっただけでも相当に楽になったのです。相談者は、これは“お線香を焚いて供養した効果だろう”と考えました。ですから今まで以上に気持ちを込めて供養を続けました。そして若くして自殺をした女性のことを思い、手を合わせている最中にこちらから話しかけたりもしました。

「いったいどんな辛いことがあったのかしら?電車に飛び込むぐらいだから、本当に苦しい思いをしたのね。健康のこと?お金のこと?それとも恋愛のことかしら?同じ女性として、あなたの苦しみが少しでも軽くなることを願っています。私にできることがあれば、伝えてください。あなたが早く成仏できるように私もできる限りのことはしますね。早く成仏してくださいね」

お水を供えてお線香を焚きながら、毎日こんなことを祈っていたのです。

 

すると毎日のように見るようになった夢の内容が変わってきました。夢の中の自分は、いつものように線路わきの道を駅へ向かって歩いています。しかし、いつもなら線路わきの柵を乗り越えて電車に飛び込む若い女性が出てくるのですが、柵のところに立って体をこちらへ向けてじっとしているのです。顔はうつむいているので見えませんが、私が横を通り過ぎるまで、ずっと体はこちらを向いています。そこで相談はまたお線香を焚きながら話しかけました。

「肩の痣が出なくなりました。きっとあなたが治してくれているのですね。ありがとうございます。夢に出てくるのはあなたですね。いつも何か言いたそうに、線路の脇から私を見つめていますけど、言いたいことがあったら言ってください。私にできることであればお手伝いしますから」

相談者はこの女性の成仏を祈りながらそのように話しかけていたのです。するとまた夢の内容が変わってきました。とうとう夢の中で自殺をする若い女性が、衝突でつぶされた顔を上げてこちらに話しかけてきたのです。

「顔をそむけないでくれてありがとう。この顔を見て顔をそむけないのはあなたが初めてです。いつも私の成仏を祈ってくれてありがとう。私は信じていたみんなに裏切られたの。友達も恋人も家族も会社にもね。私はもう誰も信じられない。世の中にはこんなにたくさんの人がいるのにいつも私は一人だけ。人は誰も私のことを見てくれなくて素通りして行くの。それは生きているときも死んだ後も同じ。だから私はどこへも行けないし、帰る場所もないの。だからずっとここにいて、電車に轢かれ続けるの。すごく怖いし、ものすごく痛い、ずっとこれを繰り返してるの。他のどこへも行けない。………助けて、助けて、痛いの、苦しいの、お願い助けて」

夢の中の女性はそう言って、ぶらぶらになった右手をぶら下げながら、相談者に近づいてきました。そこで体を掴まれる寸前で目が覚めていました。この夢を見て、どうしたらよいのか。自分では判断が出来なくて私に相談してきたのです。

 

私は相談者に尋ねました。

「今、心身の状態はいかがですか?体調が悪くなったり、精神的に不安定なったりしていないでしょうか?」

すると彼女は力なく答えました。

「はい、実は食欲がなくて、食べてもすぐに戻してしまいます。体重はこの1週間ぐらいで5キロ痩せました。夜も良く眠れません。寝ればまたこの夢を見てしまうと思うと怖くて、なかなか寝付けないのです。肩の痣は出なくなりましたが、体調はむしろ今までで一番悪くなっています」

そう言ってうつむいたのです。(3)へ続く。

 


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