夜寝ているときに霊現象に遭った場合、それが霊障なのか夢なのか、判断に迷うことがあります。先日、私に相談した方は、同じ夢を何度も見ていました。それは通勤のために最寄りの駅へ向かって歩いているとき、線路わきの路上から柵を乗り越えて、走ってきた電車に若い女性が飛び込む夢でした。道路のすぐ隣に線路が通っていましたので、女性が電車にぶつかる瞬間まで、目の前でリアルに見えてしまうのです。その女性は柵を乗り越えた後、線路内に入り直進してくる電車の前に立ち尽くします。運転手は慌てて警笛を何度も鳴らし、急ブレーキの音が周囲に響き渡ります。女性の体は凍り付いたように固まっていて、指先1つ動きません。そこへ警笛を鳴らしたまま、スピードもほとんど落ちない車が女性の体へ正面から突っ込みます。女性の体は、傾きながら大きく後ろに跳ね飛ばされます。空中に飛ばされたときに右手が肩の辺りから、不自然に背中の方へねじ曲がります。そして反転した体は顔面を地面へ向けたまま、顔から線路の敷石の中へ突っ込みます。その瞬間、頭部があり得ないほどの急角度で後ろに反り返ります。そのとき女性の顔が一瞬見えましたが、目と鼻が完全につぶれて顔が無くなっていました。敷石の上に横たわった頭部からは血が噴き出しています。その体の上を「ガタン」と音を立てて電車が通過していきます。電車は何両も女性の上を走り抜けて、4両目辺りでようやく停車しました。相談者は何でこんな夢を見るのかその意味が分かりませんでした。女性が飛び込んだ現場は、毎日通勤で使っている道路です。道路わきの線路や周囲の景色はよく覚えています。しかし、このような凄惨な事故を目撃したことはありません。そして一瞬見えた女性の顔にも見覚えはありません。しかし、もう半年以上も前から、こんなリアルな夢をしばしば見てしまうことがあったのです。夢の中では、まるで線路わきを歩いている通行人の目線で、目の前でこの事故を目撃しているのです。
さらに最近になって状況は何度か変化しています。まずはこの夢を見て起きた後は、右肩の周囲に痣のような赤黒い斑点ができています。それは触るとヒリヒリするような鋭い痛みを伴います。その痛みは1週間以上も続くことがあるので、もう何度も皮膚科や外科を受診しています。しかし、レントゲンやCTを撮っても原因は分かりません。医師の診断ではどこにも異常は認められないのです。その結果、皮膚の炎症を抑える薬を処方されて診察は終わります。そしてこの夢を見る頻度はどんどん上がっていっているのです。
ちょうどそんなときに、また状況が変化してきたのです。きっかけはお墓参りです。この方が、お祖父さんのお墓参りに出かけた時に、ちょうどお彼岸で他の親族もお墓に来ていました。この方はお墓のお掃除をしてお祖父さんの好きだった煙草に火をつけてお供えした後、お線香をお墓に立てるつもりで二束買って来ていました。しかし、先に来ていた親族の方が、すでにお墓にはお線香を二束立てていて、他にも二束火の付いたお線香が焚かれていたのです。そこでこの方は墓石の花立の横に、お線香を一束だけ焚いて、もう一束は家に持ち帰ってきたのです。そして家で、取り立てて使う予定のない一束のお線香を眺めながら、この方は気まぐれに思ったのです。
~最近、私の夢に出てくる自殺した女性は、まだ成仏できていないのではないか。それで私の夢に出てきているのなら、このお線香を1本焚いてお水をお供えして、成仏を祈ってみてはどうだろう~
最初は、せっかく買ったお線香を一束も捨ててしまうはもったいないと考えて、供養を思いついたのです。ただ、自分なりに見よう見まねで行う供養ですが、“もし、夢に出てくる女性が本当に自殺をしているとすれば、誰かがその人の供養を祈ることはきっと良いことではないか”そのように考えたのです。そしてお皿の上で1本のお線香に火を灯して、コップ一杯のお水を供えて、両手を合わせて真剣に祈ったのです。
「どうか早く成仏してください」
すると状況が明らかに変化してきたのです。(2)へ続く。