ご両親によると娘さんが亡くなった直後は、このような怪現象はまったくなかったといいます。2月の終わりごろから急に怪現象が起こるようになりました。そして今、3月になってからは毎日のように何かが起こっています。私はその理由を尋ねられて、

「今、少しずつ暖かくなって、卒業のシーズンを迎えています。お嬢さんも生きていたら、ちょうど小学校を卒業して中学へ入学する時期です。魂は肉体が無いだけで生きている人間と同じように感情を持っています。怒る時があれば、悲しんだり、喜んだり、笑うこともあります。お嬢さんはお友達が小学校を卒業して、中学生になっていくことに、刺激を受けているのでしょう。“おめでとう”と卒業を祝う気持ちと、自分がその場に一緒にいられないことの悲しみが入り混じっています。そして自分がまだここにいることを伝えるために怪現象を起こしています。ただ、これらの現象は、恐怖や威圧感を与えるものではありません。怒りや憎しみによって怪現象が引き起こされるときは、もっと強い形で出てきます。和ダンスがひっくり返るとか、蝋燭の炎が激しく燃え上がるとか、物が割れるといった状態です。今この家で起きている現象を見ると、それらよりはるかに軽い形で不思議な現象が続いています。そこに怒りや憎しみの思いはありません。お嬢さんはまだ、ご両親に甘えているのです。ですからご両親は、“私たちは大丈夫だから、安心して早くあの世へ上がってください。そして来世でまた会いましょう。どんな形で出会えるのか楽しみにしているね”そう言って送り出してあげてください」

私の言葉を聞いてお母さんは思わず涙をぬぐいました。

 

ただ、私が気になったのは、お嬢さんが私に何かを伝えようとしていたことです。私はお嬢さんの部屋に入り、お嬢さんの波長に囲まれた中でお嬢さんの魂とつながりました。すると動画ではなく、断片的に途切れた画像がいくつか頭に浮かびました。真っ暗な景色の中で水の中に落ちて、息ができずに苦しんでいることが伝わってきました。しかし、その苦しみが伝わるばかりで、他の状況が頭に浮かびません。

「お嬢さんが亡くなった池へ行きたいのですが…」

私はご両親にそうつぶやきました。私たちはすぐに家を出て歩いて15分ほどのその池に辿り着きました。

「ちょうどあのあたりに娘はうつ伏せになって浮いていました」

お父さんはそう言って池の一部を指差しました。警察はこの事故について“着衣の乱れも争った形跡もないし、事件につながる物証も発見されなかった”ために、“転落事故”と判断しています。しかし私には、暗い池の淵を歩く2つの影が見えていました。影の大きさはお嬢さんと同じぐらいです。そして池のほとりに立ったあと、いきなり背中を押した強い力を感じました。娘さんはその直後に池に転落しています。そして落ちる瞬間に振り返って背中を押した両手が目に入りました。顔は見えませんでしたが、それはピンクの服を着た女の子の手だったのです。当日はお嬢さんを探し始めたのと同時に雨が強く振り出しています。また、池の周囲では、お嬢さんの体を引き上げるために、たくさんの人が集まりました。そのため犯人の足跡は踏み荒らされて判別できませんでした。しかし、この事故は娘さんが自らこの池のほとりにやってきて足を滑らせて転落したわけではないのです。

私はご両親に話しました。

「このことはいずれ明らかになります。犯人はきっと捕まることになるでしょう。少年法によって犯行当時小学生の女の子の罪を問うことはできなくても、心の中を覆い尽くした罪悪感から逃れることはできません。それは法で裁かれるよりもはるかに強く本人を苦しめます。早ければ、生きていればお嬢さんが高校生になる3年後ではないでしょうか」

私はまた卒業シーズンを迎えるその頃に、娘さんの魂が激しく動き出す様子が頭に浮かびました。そのときのお嬢さんの怒りや悲しみは、背中を押した同級生に強くぶつけられるでしょう。そしてその恐怖やプレッシャーに18歳の女の子が堪えられるとは到底思えないのです。

 


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