先日、以前からご主人の病気のことで私に相談をしていた奥さんから連絡が入りました。このご夫婦はとても仲良くお互いに愛し合い、いたわり合いながら幸せに暮らしていました。ただ、ご主人がガンにかかってしまいました。医師からは「余命は長くても半年」と宣告されていました。ですからご主人はもう、あまり長く生きることはできません。それでも一緒に生きてきた妻からすれば、「一日でも長く生きてもらいたい」と思うのは当然です。そこでご主人の病状を逐一私に相談しながら、その時にできる対応を私に依頼してきたのです。私はがん細胞が死滅して、健康を取り戻している状況をイメージしながら、全力でパワーを送り続けました。その結果、告知されてから1年半まで生きることができました。それでも肉体はもう限界を超えていましたから、最後は穏やかに息を引き取りました。

 

そしてご主人が亡くなった後、奥さんは「幽霊でも良いから会いに来てほしい」「夢の中で良いからご主人と会いたい」と毎日願っていました。死んで肉体が亡くなった魂は、あの世へ上がって生きていた時の記憶を消されて、来世へ生まれ変わるのが定めです。ですから本当は、ご主人を現世に引き止めるような思いを抱くことは良くありません。もし何かを願うなら、

「あなたと暮らした時間は本当に幸せでした。ありがとうございました。私は大丈夫だから、早くあの世へ上がって、来世へ生まれ変わってください。私もいずれ時が来たらあの世へ上がります。そうしたら来世でまた会いましょうね。来世であなたとどんな形で会えるのか、楽しみにしています」

このように亡くなった方が今世に執着しないように語りかける方が良いのです。ただ、この女性は亡くなったご主人を愛するあまり、ご主人の魂に「会いに来てほしい」と話し続けていたのです。

 

やがてこの方の家では不思議な現象が起こり始めました。ご主人のご仏壇に手を合わせているとき、何かご主人の気配を感じると、お線香の煙がいつも揺れているのです。もちろん窓も仏間の扉もすべて閉まっています。そんなときこの女性は“ご主人が会いに来てくれた”と思い、心から喜びました。夜中にトイレに起きると、誰もいないはずのご主人の部屋から、カチャカチャと物音がするのです。慌てて部屋のドアを開けてみました。そこには誰もいません。ただ、ご主人の匂いがほのかに漂っているのです。廊下を人が歩く足音を聞いて、そちらへ目を向けると、ご主人の影がはっきりと見えたのです。思わず「あなた」と声をかけると、見えていた影は目の前で消えました。このような現象は、ご主人の魂が、自分に執着して悲しんでいる奥さんを心配して、家の中にとどまっていることで引き起こされています。奥さんは、亡くなったご主人をまた感じることができて、嬉しいかもしれません。しかし、これではご主人の魂はいつまで経ってもあの世へ旅立つことができません。それは“魂の定め”を考えると、決して良いことではないのです。

 

そしてもう一つ、こういったことを繰り返すことは、奥さんにとっても良くないのです。奥さんは心の中でいつもご主人の魂を呼び続けています。そしてご主人の魂は奥さんの思いを察して奥さんに会いに来ます。そして自分の来たことの痕跡を残して帰ります。これは言い方を変えると、明らかな“霊体験”です。霊体験を毎日のように繰り返していれば、奥さんの霊的な間口は、日に日に広がっていくのです。私はそのことを奥さんに話しました。そして「辛くてもどこかで気持ちの整理をつけて、ご主人の魂を解放してあげてください」と話しました。時間はかかりましたが、やがて奥さんは自分の気持ちに整理をつけて、ご主人を解放しました。しかし、それまでの間、ずっと霊体験を続けてしまった影響は奥さんにはっきりと表れてきたのです。(2)へ続く。

 


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