以前、精神的に不安定になっている娘さんのことでお母さんから相談を受けました。娘さんは当時、20代前半でした。高校を卒業して仕事に就いたものの長続きがせずに、何度も転職を繰り返していました。私から見れば、“HSP”であり“エンパス”であるために、周囲の人の思いを過剰に受け止めてしまいます。そして感情の起伏が激しいために、自分に向けられた“悪意”や“嫌悪感”には自分を抑えることができません。その結果、職場で泣きだしたり、大声を出してしまうことがあって周囲の人と正常な人間関係を作ることができなくなっていました。さらに霊的な間口も広いので、精神的なストレスをきっかけにして、霊的なものも呼び込みやすいのです。しかし、自分に向けられた人の悪意や嫌悪感を感じなければ、精神的には安定していますから、感情を乱すこともありません。まだ仕事自体にも人との付き合い方にも慣れていないため、不安定になっていますが決して精神疾患を患っているわけではないのです。実際、娘さんの高校時代にお母さんが心配して、精神科に連れて行ったことがありました。しかし、そこでは統合失調症や双極性障害などの精神病と診断されることはありませんでした。ですから私は、

「まずは精神的にプレッシャーのかからない仕事や人とのコミュニケーションの少ない仕事を選んで、作業を続けながら社会生活に慣れてくれば、普通に生活していくことはできます」

と断言していたのです。

 

しかしある日、お母さんが2泊3日の職場の社員旅行へ出かけたときに事件が起こりました。娘さんには30代前半のお兄さんがいます。お兄さんは精神的に不安定な妹から、何度も迷惑をかけられていました。そして自分が結婚適齢期になったときに、”妹が精神病だ”という理由で、乗り気だった縁談が破談していました。そのためお兄さんは妹を厄介者と感じて毛嫌いしていました。そして敏感な娘さんはそのお兄さんの気持ちをいつも感じているため、お兄さんを避けるようになっていました。そんな兄弟が二人の間を取り持ってくれる母親がいない中で一緒に生活すれば、それが短期間であっても家の中はまさに“一触即発”の薄氷状態になります。案の定、二人は食事の時のちょっとした会話から、大喧嘩を始めました。そしてお兄さんは娘さんに、

「お前は頭が狂ってる、これは病気だから病院へ行って治せ、オレが今から病院へ連れて行ってやる」

そう言うと精神科の専門病院へ電話をかけて、診察時間や入院施設を確認しました。そして娘さんを無理矢理、車に押し込めると、精神科の病院へ連れて行ってしまったのです。

 

娘さんはもちろん、嫌がって抵抗します。それは車の中でも、病院の中でも続きました。病院では娘さんを救急患者として扱い、すぐに鎮静剤が注射されました。この病院はこの地域では非常に評判が悪く、一度入院したら二度と退院できない悪徳病院と言われていました。娘さんを診察した医師は、お兄さんに話しました。

「この状態では帰宅しても対応できなくありませんか?このまま入院させて治療した方が良いと思いますよ」

娘さんを嫌っているお兄さんは、医師の言葉に直ちに反応しました。

「そうですね、家族ではどう扱ったらよいのか判断できません。もし、可能ならこのまま入院させて治療していただけると助かります」

そう言って娘さんを医師に託すと、受付に直行してすぐに入院の手続きをしてしまったのです。

 

驚いたのはお母さんです。社員旅行から帰ると、家にいるはずの娘がいません。息子に尋ねると、

「お母さんが旅行へ行っている間に、家で大暴れして手が付けられないから、精神科の病院へ連れて行って入院させてきた」

そう答えたのです。(2)へ続く。

 


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