先日、「定期的にかかってくる間違い電話で悩んでいる」という方から相談を受けました。その方によると3年前くらいから、毎年春と秋の1年に2回、気持ちの悪いその電話はかかってきます。特に最後にかかってきたときは、間違い電話では済まない状況まで追い込まれたので、私に相談してきたのです。私はまずその電話について、具体的にいつかかってきたのかを尋ねました。それは春と秋の1年に2回というのが、まるで“お彼岸”と関わるがあるように感じたからです。お彼岸は「春分の日」と「秋分の日」を中日として、その前後3日間(合計7日間)がお彼岸の期間になります。お彼岸はお盆のように祖先の霊を祀る行事ではありません。お彼岸は“六波羅蜜”という善行を積んで、ご先祖に感謝をする期間です。六波羅蜜とは「布施(ふせ):見返りを求めずに、他人のために惜しみなく善行を施すこと」「持戒(じかい):戒律を守り、身を慎み、他人に迷惑をかけないこと」「忍辱(にんにく):身に起こる災いを受け入れ、耐え忍ぶこと」「精進(しょうじん):常に静かな心を持ち、動揺しないこと」「禅定(ぜんじょう):冷静に第三者の立場で自分自身を見つめること」「智慧(ちえ):怒りや愚痴、貪りに捉われず、物事の審理を正しく見極めること」この六つを実践して、先祖供養をするのがお彼岸なのです。この時期は先祖霊の因縁因果があればなおのこと、それが無くても霊的には敏感な時期になります。したがって霊障や霊現象が起こりやすいのです。私が思った通り、この3年間の“間違い電話”という怪現象は、すべて春と秋のお彼岸期間中に起きていました。

 

それでは実際にどのような電話がかかってくるのか。それは深夜1時過ぎに突然かかってきます。まるでテレビドラマの音声でも聞かされているように、相手がただ一方的に話し続けてくるのです。

「鈴木さん、鈴木さんでしょ、家にいてくれてよかった。あなたには丸の内で働いていたころ、とてもお世話になりました。あの頃は私は課長に目をつけられて、いつもいじめられていたからね。あなたがいつもフォローしてくれたから、それでも何とか勤めることができたんです。だから今でも鈴木さんにはとても感謝しているんです。本当にありがとうね…」

受話器から聞こえてくる声は、中年男性のようで、明るい声で上気しているように興奮気味に話し続けるのです。ただし、相談者の苗字は鈴木ではありません。

「すみませんが、番号間違えていませんか?私は鈴木ではありませんし、あなたは知りません。電話番号をよく確かめて電話してください」

相談者はそう言って電話を切ろうとします。しかし、相手は相談者の言葉を一切受け入れません。

「何言ってるの?鈴木さんの声じゃない、口調もまさに鈴木さんでしょ、あのころ課長に私が怒鳴られるたびに、いつだってあなたが私を助けてくれたじゃない。会議室で課長からファイル投げられたことあったじゃない。あの時も鈴木さんが中に入って止めてくれたんだよね、今でもしっかり覚えてるんですよ」

そういって相手は一方的に思い出話を話し続けるのです。最初は黙って聞いていた相談者もさすがに腹が立ってきて、

「今何時だと思っているんですか!私は鈴木じゃないって言ってるでしょ、いい加減にしてくださいよ、もう、電話切りますからね!」

怒気をはらんだ相談者の言葉に、相手も次第に喧嘩口調になってきます。

「鈴木さんこそ、何をいってるの!私はあなたに感謝してるし、お礼を伝えたくて話しているのに、そんな言い方はないでしょ、あなたがそういう態度に出るなら、今から家へ行ってもいいんですよ、もう、近くまで来てるんですよ!あなたの家の近くまで!」

電話相手はそう言うと、突然電話を“ガシャン”と切ったのです。(2)へ続く。

 


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