ですからお母さんが結婚に反対する理由として

「私には彼があなたを幸せにする夫になるとは思えないから」

というのは、私からするとそれで十分な答になっているのです。私はこの女性から自分たち二人が結婚した場合、

「本当に不幸な結末になるのか教えてほしい」

と尋ねられました。私は神経を集中して、彼女と彼の未来を霊視しました。まず、二人の未来に「結婚生活を送る」という道筋は感じられました。未来の選択肢は多くの場合、一つではありません。複数の未来の選択肢の中から意識的にも無意識のうちにも自分で進む道筋を選んで未来を作りだしています。この選択肢の中に存在しない未来は、いくら願っても努力をしても現実化することはありません。選択肢の中にある未来なら、その道筋(未来)へ進んで行くこと(=現実化していくこと)は可能です。私が彼ら二人にそう感じたのは、今よりももう少し先の未来の中に、一緒に暮らしている彼らの様子が断片的にいくつも頭に浮かんできたからです。ただし、私が感じた二人の結婚生活は壮絶なほどひどいものでした。頭に浮かんだ彼の顔は、彼女のスマホの中にある笑顔の彼とは全くの別人でした。髪の毛も髭も不精に伸びたまま、目は落ちくぼんで廃人のように不気味に光っています。室内の壁やドアはいくつもへこんで傷だらけになっています。洗面所の鏡は割れています。リビングのテーブルにはお酒の空き瓶と空き缶があふれています。いったい彼に何があったのでしょうか。そこに彼女が帰宅します。仕事が終わって帰ってきたようです。すると彼氏はいきなり立ち上がって彼女に飛び付くと、両肩を掴んで激しくゆすりながら怒鳴り始めました。

「いったい、今何時だと思ってんだ、こんな時間まで仕事してるわけねぇだろ!男とホテルでも行ってたのか、このクソ女が!」

彼女の首は激しくゆすられておかしな形にねじれています。

「痛い、痛い、痛い、やめて!明日の会議までに資料を作らなければいけなくて、残業してただけでしょ、また、一日中飲んでたの?もう、気持ちを切り替えて新しい仕事を探すって言ったじゃない!どうしたの、ちゃんとしてよ、あなたらしくないじゃい!」

彼女が話し終わる前に、彼の右手は彼女の髪の毛を掴んで、床に引き倒しました。頬骨の辺りが床にガツンと当たって、彼女はうめき声をあげて顔を覆いました。

「黙れ、偉そうに!俺に説教できるほどお前は偉いのか!思い知らせてやる!」

彼は顔を覆って床に倒れ込んだ彼女の頭や体を力いっぱい蹴り続けます。彼女の顔は切れて、口からも激しく出血しています。

「助けて!誰か助けて!殺される!」

倒れてぐったりしている彼女をめがけて、皿や食器が思いっきり投げつけられます。室内には助けを求める彼女の悲鳴と物が割れて砕け散った音が響き渡ります。顔面血だらけとなって動かない彼女の顔や体を彼は思いだしたように何度も蹴り続けています。そしてしばらくするとインターホンが鳴らされました。彼氏が無視していると玄関ドアを激しく叩く音とともに男性の大声が鳴り響きました。

「警察です。〇〇さん、いるんでしょ、早くドアを開けてください。近所から通報が入りました。中を確認させてください。開けないなら管理人の合鍵で入りますよ」

 

彼はうなだれて玄関を開けました。彼女は血まみれで、顔は見る見るうちにバスケットボールのように腫れあがっていきました。ぐったりとして口をきくこともできない彼女は救急隊のストレッチャーに乗せられて、救急車で病院へ搬送されていきました。室内には応援の警察官が何人もやってきて写真を撮っています。パトカーの赤色灯にマンションのエントランスに集まってきた野次馬の顔が浮かび上がりました。彼は傷害の現行犯として、警察に逮捕されてパトカーに乗せられて警察署へ連れていかれました。(3)へ続く。

 


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