以前、「新しい家に引っ越しをしてから、家族の状態が悪くなったので見てほしい」と頼まれました。相談者の新しい家は、郊外の住宅地に建てられた新築の木造2階建てです。家や土地を見るときには、まずは周囲の川や湖沼をチェックします。霊は水のある場所に集まる傾向があるからです。あとは城下町であれば、お城との位置関係やお城の歴史を調べます。お城を舞台にした戦の攻防戦でたくさんの人が亡くなっていれば、その因縁因果が今に至るまで残っていることがあるからです。さらには病院や墓地など、霊的に悪い影響を与えるものがあれば、その位置関係を見て、悪影響がこちらに流れてきていないか、それを確認します。そしてそれらの作業が終わってから、相談者の家の周囲の状況を確認して、敷地の中と家の中を観ることになります。私はこの家を訪れる前に家の中と外を写した画像を送信してもらいました。家を外から写した画像を見ると、家の敷地が黒い霧で覆われたように煙って見えます。しかし、家の中の各所を写した画像には霊体も霊ハクも念も感じられません。これは現場まで行ってみなければ、はっきりしたことは答えられないと考えて家までやってきたのです。
私は家に入る前に家の周りを何周か歩きながら家を眺めました。画像に写っていた通りに、家は新しいのにくすんで見えます。これだけはっきりと霊的なものの影響が出ている家に住んでいれば体調もタイミングも悪くなることはよくわかります。ただ、それがいったい何によって引き起こされているのかが、今一つ不明瞭なのです。私は門扉を開けて家の敷地に入りました。庭の中には高さ1m以上はある大きなさざれ石が飾り石として2つ置かれています。しかし、家の土地からもこの2つの石からも霊的なものがこもっている感じはしません。私は霊感の感度を上げながら敷地の中を歩き回りました。すると門扉から玄関までの部分が、もっとも悪臭が漂っているように感じました。私はこのわずか数メートルほどの地面を目を皿にするようにして凝視しました。そこには門扉から玄関まで平板の敷石が点在していました。そして踏み石の周囲には砂利と砕石が敷かれていました。私は相談者のご主人に尋ねました。
「立派なさざれ石や敷石が敷かれていますが、これらの石は業者が設置したのでしょうか?」
すると相談者は少し照れくさそうに微笑みながら、
「実は私は昔、造園の仕事をしていたことがあるので、業者から安く仕入れて、私が自分で設置しました。いかがでしょうか?」
そう答えたのです。一見するとプロの仕事のようにきれいな庭に仕上がっています。しかし、私が見たいのは、その見栄えではなく中身なのです。
「申し訳ありませんがこの敷石の裏側をひっくり返してみたいのですがよろしいでしょうか?」
私の突然の質問に相談者は驚いたように絶句しました。門扉から玄関まで敷かれた直径50センチほどの長方形をした踏み石は、砂利や砕石の中にきれいに埋め込まれています。これは踏み石の下にスコップを差し込んでテコの原理で持ち上げれば簡単に裏返しになります。しかし、せっかくきれいに設置されているものをひっくり返すことはご主人からしても不本意だったのでしょう。
「そこまで確認しなければいけないでしょうか?」
ご主人は力なくそう言って私の顔を見つめました。
「以前、庭に敷いた踏み石を裏返したところ、石に文字が刻まれていたことがありました。その石は墓石だったのです。何か門扉から玄関まで続くこの辺りに、問題の根源があるような気がしてならないのです」
「わかりました」
相談者のご主人は、私の言葉を聞くと覚悟を決めたようにそう答えると、スコップを取りに物置へ走りました。(2)へ続く。