実は、亡くなった3人には、この家の血を引く男子という以外にも共通点がありました。いずれも49歳で死んでいるのです。そして3人の命日は、長男が6月6日、次男が6月26日、いとこも6月6日でした。さらに相談者が調べてみると、長男がこのクスノキを伐採したのが、数年前の6月6日でした。長男が“家の守り神”と言われたクスノキを伐採した日が長男といとこの命日になっているのです。これは偶然とは思えません。相談者はクスノキを切り倒したことによって何かの因縁を背負ってしまったように考えたのです。また、49歳の6月に同じ血を引く3人が死んでいることについても何か意味があるように感じました。そして相談者が49歳になって3か月が経った1月から、おかしな夢を見るようになりました。夢の中で深い森の中を歩いていると、遠く離れた木の影から現れた老人が、この方をまっすぐに見つめながら、不思議なアクションをするのです。まるでピストルのように右手の親指と人差し指を直角に曲げて構えます。その右手を頭上までゆっくりと持ち上げると、ピストルの形に指を曲げたまま今度はゆっくりと右手を下ろしていきます。そしてまっすぐに伸ばした人差し指が相談者の顔の前に来た瞬間、まるでピストルを発射したように一瞬右手を揺らします。そして相談者の目を凝視したまま、口元でニヤリと笑って森の中へ消えていきます。この薄気味の悪い夢を49歳3か月の1月以降、度々見てしまうのです。

 

さらに2月になると夢の状況が少し変化します。夢の中で木陰から現れる老人に位置が、前回よりも明らかに近づいているのです。そしていつもと同じように右手で作ったピストルを相談者の顔へ向けてゆっくりと下ろすと、まるでピストルを発射したとでもいうように、一瞬揺らして不気味に笑います。そしていつの間にか森の中へ消えていきます。3月になると、夢の中の老人の位置はさらに相談者に近寄ります。そして右手にはピストルの形をした木の枝を握り、顔の前で発射した瞬間、無言のまま“バンッ”と口を動かして消えていきました。4月になると夢に出てくる老人は、もう相談者の目の前まで迫りました。そして頭上に振りかざしたピストルの形の枝を相談者の顔の位置までゆっくりと引き下ろしていきました。そして目の前で木の枝を止めた後、不気味なしゃがれ声で初めて口を開いたのです。

「次はお前!」

老人は夢の中でゆっくりとそうつぶやいたのです。相談者はもう恐怖で夜眠ることができなくなりました。眠ってしまうと、毎回のようにこの老人が夢に出てくるようになっていたのです。そこでいてもたってもいられずに私に相談してきたのです。

 

私は疲れ切った相談者の顔を見つめながら、その中に人の霊とは違った存在を感じました。たとえば稲荷様や龍神様や天狗などは、人の姿は持っていません。しかし、これらは確かに存在して力を持っています。これらは“自然霊”と呼ばれるものです。自然霊には神と呼ばれるような高級なものから、人間を惑わすことしかしない低級なものまでさまざまに存在しています。自然霊は人の霊とは異なり、感情がありませんから、情に訴えたり常識に照らして諭していくことが困難です。自然霊は人の姿を持ちませんが、人に憑依することはあります。私は相談者に憑いた自然霊(木霊)を時間をかけて祓いました。そして実家に残るクスノキの切り株に宿ったこの木の木霊を丁寧に昇華していきました。そしてご実家の母屋の隣には、今までこの一族を守ってくれたクスノキへの感謝を込めて小さな祠を作りました。それから相談者の方は夢の中に老人がこの出てくることは無くなりました。そして最近になって50歳の誕生日を無事に迎えることができたと連絡をいただいたのです。

 


シュンさんのホームページ ここをクリック