先日、私に相談した方は、実家あったクスノキを切り倒してから不可解な出来事が続いています。クスノキは樹齢が長く巨木になることで知られています。今、日本にある巨木の第1位は、鹿児島県姶良郡にある「蒲生の大楠」で幹周は24・2m、樹高は30m、樹齢は1500年です。第2位は静岡県熱海市にある「来宮神社の大クス」で幹周は23・9m、樹高は20m、樹齢は300年です。第3位は青森県西津軽郡にある「北金ヶ沢のイチョウ」で、幹周は22m、樹高は40m、樹齢は1000年です。第4位は福岡県築上郡にある「本庄の大クス」で、幹周は21m、樹高は23m、樹齢は1900年です。同じく第4位は佐賀県武雄市の「川古の大楠」で、幹周は21m、樹高は25m、樹齢は3000年です。つまり、今、日本にある巨木ベスト5のうち4本は、クスノキが占めています。この方の実家のクスノキも、もうすぐ50歳になるこの方が生まれた時から実家の母屋の裏に生えていました。子供のころはこの木に登ってよく遊んでいました。そのころ生きていた祖父からも
「この木はこの家の守り神だから、切ったり傷つけたりしないで大切に扱うように」
と何度も言われていました。ただ、大人になると地元を離れて東京で暮らすようになりました。実家は長男が跡を継ぎましたが、この方は神仏や霊的な話を頭から否定する人でした。数年前に家が古くなって、建て替えをしたときに、新しい家の邪魔になるからと、建築業者に言ってクスノキを根元から伐採してしまったのです。
相談者がクスノキが伐採されたことを知ったのは、建て替えられた実家へ初めて行った時でした。実家へ行った理由はこの長男のお葬式でした。長男は家が建て替えられてしばらく経った時に、突然の心筋梗塞で浴室で倒れてそのまま息を引き取ったのです。当時、まだ50歳を前にした若さでした。相談者は無残に伐採された実家の裏にあるクスノキの切り株を見て、
「これは何か大変のことになった」
と実感しました。子供のころに祖父から言われた言葉ももちろん頭をよぎりました。それと同時に「どうして切ったんだ?」という祖父の声が、何度も頭の中の響いていたのです。樹木には木霊(こだま)と呼ばれる精霊が宿っていると言われています。特にクスノキの他にも、ケヤキ・イチョウ・ヤナギ・サクラには木霊が宿りやすいと言われています。相談者からすると、突然の兄の死は、この木を切ったことと何か関係しているように思えてなりませんでした。
それから1年後に、新しく建てられた実家で2回目のお葬式が行われました。相談者の兄(次男)が、家の近くで車にはねられて死亡したのです。それもまるで酔っぱらっているように、車道を走る大型トラックに、フラフラと近づいて頭から飛び込んだのです。頭をトラックの前輪で踏まれ、顔は跡形もなくつぶれて、血の海となった道路上に脳のかけらが散乱していました。次男の血液を調べましたが、アルコールも薬物も検出されませんでした。警察は最終的に事故と断定しましたが、当初は“自殺ではないか”と言われていました。
そしてさらにそれから1年経った昨年、相談者のいとこが、釣りをしている最中に防波堤から海に転落して溺死しました。餌に食いついた魚を釣り上げようと、防波堤の上に立ち上がりました。ラインをリールに巻き上げている最中に、魚に引っ張られるように海中に転落したのです。ただ、釣りをしていたこの辺りには、人を海に引きこもほどの大きな魚はいません。いったいどうしてこのような事故が発生したのか、原因は分かりませんでした。
つまり、実家の家を建て替えてから(=クスノキを切り倒してから)、3年間、兄弟といとこが相次いで亡くなって、3回もお葬式を行うことになりました。さらに、3人の死には不可解な点が他にもあったのです。(2)へ続く。