皆さんは神社やお寺、河原などで、小石が積み上げられているのを見たことがあるでしょうか。長野県の御嶽山や青森県の恐山の「賽の河原」は有名ですが、青森県には恐山以外にも川倉・今泉・深浦・仏ケ浦に「賽の河原」があります。そこには大小さまざまな石積みが作られています。先日、私に相談された方は、ここでちょっとしたトラブルに遭ってしまいました。恐山の賽の河原で高い石塔を見ていた時に、観光客の子供が近くを走り回っていました。そして背中にいきなりぶつかってきたため、前のめりになって顔から石塔に激突してしまったのです。石塔は大人の膝上ぐらいの高さがありましたが、見事に破壊されてしまいました。そしてそこに突っ込んだ本人も顔と手を強打して、擦り傷と打撲の跡が残り、近くの病院で治療を受けることになったのです。幸い骨や神経には異常はなく、入院はしないで当日に帰宅できました。体の傷は大したことはなかったのですが、それからおかしなことが頻繁に起こるようになったのです。

 

まず、その日の夜に寝ていると鼻血が出て目を覚ましました。鼻血が出たことなど何十年ぶりです。念のため、翌日に頭の中を調べてもらいましたが、異常はありませんでした。病院の帰りに実家に立ち寄ると、実家で飼っている犬がこの方に向かってずっと吠え続けてきたのです。ずっとこの方に懐いているペットで吠えることなどめったにないおとなしい犬です。そして実家からタクシーで自宅へ向かう途中、運転手が何度も振り向いてくるので、

「何か私の顔に付いていますか?」

と尋ねると、運転手は怪訝そうな顔をして

「いや、すみません。お一人ですよね?」

と訊いてきたのです。実家の近くの大通りで流しのタクシーを拾いましたが、一緒にいる人間は一人もいませんでした。さらに翌日、昼食を食べに仕事先の同僚と二人でお蕎麦屋へ入りましたが、出てきたおしぼりは3本でした。

 

そしてマンション5階の自宅に帰ると、入り口のドアが泥が付いたように汚れていたのです。それはそのあとも何度か続きましたので、誰かのいたずらだと思って、証拠の画像を撮って管理会社へ訴えようと思いました。しかし、スマホで画像を撮ろうとすると、シャッターがスムーズに下りなかったり、画面がぶれてきれいに撮影できないのです。それでも何とか画像が取れたので、拡大してよく見ると、泥は子供のような小さな掌がいくつも連なっていたのです。そして恐山から帰ってきてから、体調も優れません。日中でも寒気がして体が震えたり、逆に滝のように汗が流れ出て止まらなくなることもありました。仕事も思いがけないトラブルに見舞われて、お得意さんを怒らせてしまったり、機械がいきなりストップして、納期に間に合わなくなったこともありました。さらに深夜にマンション5階の窓を外から叩く音がして、外を見るともちろん誰もいません。しかし、翌日の昼間にその窓を確認すると、窓の外側に小さな手形がいくつも付いているのです。それも玄関ドアに付いていたように、泥でできている手形です。さすがに「これはおかしい」と思い、人づてに私のことを聞いて相談にきたのです。

 

霊場として知られる「恐山」には「恐山菩提寺」「円通寺」「奥の院」といろいろな寺社があります。この中で私たちが一般的に「恐山」と言っているのは「恐山菩提寺」のことです。恐山菩提寺は、今から1200年前に慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)によって開かれた霊場です。円仁は、若いころに中国で修業した後、日本に戻り、諸国に教えを説いた旅の果てに下北半島のこの地に辿り着かれました。このときに目の前に広がる地獄を思わせる荒涼とした景色に感じ入り、「地蔵菩薩一体」を彫刻して本尊としました。したがって恐山菩提寺の本尊は「延命地蔵菩薩」になります。それでは恐山の中で「賽の河原」や積み上げた石塔がどのような意味を持つものなのか、次回でお話ししたいと思います。(2)へ続く。

 


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