人形の目から涙が出たとか、人形の髪の毛が伸びたという話はよく耳にします。私はそれは持ち主の思いが人形に込められているから起きていることだと考えています。私は今までに動くはずのないものが動いたり、音を立てたり、時には飛んでくる様子を何度も目撃してきました。それらの出来事を科学的な理屈を重ねて説明するよりも、私からすれば“目に見えない何か(霊や念など)によって動かされている”と考えた方が、とてもシンプルで分かりやすいのです。皆さんも子供のころには、お気に入りのお人形に名前を付けて、夜も布団の中にお人形を連れてきて一緒に眠ったことがあると思います。そうやって一日中、抱きかかえられた人形には、知らず知らずのうちに持ち主の思い(念)が入り込んでいます。その思いが強く残っていると、時にあり得ないような現象が引き起こされることがあります。

 

先日、私に相談された方は、もう30年以上も前の子供のころの思い出に今も苦しめられています。子供は大人に比べて視野も狭く、物事を深く考えません。ですから大人では決して口にしないようなひどい言葉を友達に投げかけたり、残酷に生き物を殺したりもします。悪意や深い意味はないのですが、その時の一時の感情に流されて、人を傷つけてしまうこともあります。私に相談した方は二人兄弟の兄です。3歳年下の弟がいます。この方が小学校2年生の時に事件は起こりました。このときは学校から帰って夕飯ができるまでの間、いつものように家の中で弟と遊んでいました。二人はアニメのヒーローの人形を持っていました。それを持って部屋の中で戦わせていたのです。ただ、いつものように遊んでいるうちに、いつものように兄弟喧嘩が始まりました。そしてお兄さんは体力に物を言わせて、弟が大切にしていた人形を取り上げたのです。この人形は弟がお風呂に入る時も夜寝るときも大切に抱きかかえていたプラスチック製の人形でした。弟は兄に向って、「返せよ、どろぼう!」と言って喚きました。二人のケンカの声を聴いた母親が料理の手を休めて部屋に駆け込んできます。

「早く、返しなさい!それはあなたのものじゃないでしょう!かわいそうでしょう!」

母親からそう怒られた兄は、手に取っていた人形を思いっきり弟に投げつけました。するとコントーロールを失った人形は大きな音を立てて柱の角にぶつかりました。そしてちょうど右足の膝のところから、ポッキリと折れてしまったのです。弟は泣き喚きながら兄の元へ突進して抗議しました。兄はバツが悪そうに、

「知らねえよ、手が滑っただけじゃん」

そういって自分の部屋へ逃げ込みました。弟は家にあった薬箱から薬を取り出して、人形の右膝に塗りました。そして接着剤を塗って包帯で膝の部分を固定しました。それでも包帯を外すと、右足は力なく膝のところから離れていきました。結局人形の右膝はどうやってもつながることはありませんでした。

 

それ から1か月ぐらいしたとき、弟は交差点で横断歩道を横断中に左折してきたダンプカーに轢かれて車輪に右足が巻き込まれました。命は何とか取り留めましたが、右足は膝から先を失ってしまいました。その場所は人形の足が折れた場所とまさに同じだったのです。弟が入院している間、相談者やご家族は、少しでも弟が元気になるように、大事にしていた右足の折れた人形を専門家へ修理に出して、病院へ持っていこうと考えました。しかし、家の中をどれだけ探しても人形は見つかりませんでした。そこで弟にそのことを尋ねると、

「死んじゃったよ、死んじゃったからオレがお葬式を出してあげたの」

そう言って目を伏せました。弟は事故から30年以上が経過した今も義足を付けて生活しています。相談者の方は、弟が大切にしていた人形と弟さんが、どこかでつながっているような気がしてなりません。そして弟さんの不幸な事故は、自分が弟の人形の右足を折ったことが引き金になっていると考えて、今も自分を責めています。不思議なことですが、あり得ないことではないと私は感じています。

 


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