先日、たまたまテレビをつけると“悪徳商法に騙された被害者と弁護士・番組スタッフが、加害者の会社を直撃する”という番組が放送されていました。被害者は初老のご夫婦です。老後の生活費の足しになればと考えて、怪しげな投資話に騙されてしまったのです。 「毎月投資金額の5%が利益として入る」というおいしい話です。最初は恐る恐る100万円を預けたのです。すると翌月から確かに5万円が振り込まれてきました。その状態が半年ほど続いた後、この会社の営業マンから連絡が入ります。
「私共の資金運用は極めて順調に展開しています。会社も大きな利益を出していますし、お金を預けていただいたお客様にも、お約束の利益をお渡しして喜んでもらっています。今回、契約後半年を経たれたお客様だけに、特別に金利を月利8%で運用する特別プランを用意しました。この機会に是非、投資額を増額されてはいかがでしょうか」
営業マンは資料を見せながら、自信たっぷりに笑顔でこう説明しました。そしてこのご夫婦は、今まで約束通りにお金が振り込まれていたこともあって、この会社を信用してしまったのです。そして老後のために貯めた1500万円をこの会社に預けてしまったのです。そして翌月になると約束通り、銀行には120万円が振り込まれました。しかし、次の月からは約束の日にちになっても一向にお金は振り込まれません。不審に思って会社に電話をすると、
「海外の株や債券に投資していたところ、予期しない大暴落に遭ってしまい大きな損失が出てしまいました。ただ、リスクヘッジした他の投資案件で利益が出ていますから、来月には2か月分まとめてお振込みいたします」
そう言って電話を切られました。しかし、翌月になってもやはり、お金は振り込まれません。また、問い合わせてみると、「来月にはまとめて払います」の一点張りで、結局それからお金が振り込まれることはありませんでした。そこで直接会社の住所を訪ねると「移転しました」という張り紙が張られて、連絡先と書かれた電話番号に何回電話しても話中でつながらないのです。老夫婦は国民生活センターに相談しましたが、「同様の相談が何件も寄せられています」と言うだけで、特にお金が戻ってくることはありません。警察にも相談して、契約書を見せましたが、「調べてみます」と言うだけで、やはりお金は1円も戻りません。そこで藁にもすがる思いで、テレビ局にこの話を持って行ったのです。
番組が会社の所在地を訪ねたものの人が出入りしている気配はありません。そこで雑居ビルの中のこの会社のフロアをしばらく張り込みました。そして社長の自宅をようやく突き止めました。そして弁護士やこの夫婦と一緒に社長を直撃したのです。番組スタッフが、社長に質問します。
「投資話でこのご夫婦から1500万円を預かっていますよね、これはいわゆる“投資金詐欺”ではないのですか?社長、答えてください!」
すると社長は悪びれる様子もなく、
「私どもは何ら法に違反していることはしていません。投資の世界では利益が出ることもあればマイナスになることもあるのは当たり前です。今は相場が下がっていますが、上がってきたときに皆さんにはお金は返金します」
社長は自分に向けられたマイクを払いながら、開口一番こう言ったのです。すると弁護士が
「あなたは元本保証で確定金利で月利8%を支払うと言っているのですから、契約上は相場が上がっても下がってもその金額を支払わなければなりません。そして預かったお金は本当に運用していたのですか?もし、投資話でお金を集めて実際には運用をしていないとなればこれは“投資金詐欺”ということになります」
しかし、社長は弁護士の言葉を予期していたように、薄笑いを浮かべながら抗弁を始めたのです。(3)へ続く。