先日、最近ペットを亡くした方から、飼っていた猫がたびたび家にやってきていると相談を受けました。人間では亡くなった後に、その人の魂が家に帰ってきているという話は時々耳にします。それは故人の匂いがしたり、故人が使っていた部屋から物音がしたり、気配を感じるというような話です。或いはお仏壇のろうそくの炎やお線香の煙が窓を閉めているのに揺れたということもあります。ですから直接故人の姿をした幽霊が目の前にドンと表れると言うような、はっきりとしたものではありません。私も最初はそう思って話を聞いていたのですが、この方の場合は、もっとリアリティのある現実的な話なのです。

 

たとえばこの方は、亡くなった猫ちゃんのために自分で手作りのお仏壇を作って、猫の写真を飾っています。その前には毎朝、コップ一杯の水とキャットフードをお供えしています。それが夜チェックすると、確実に減っていることがあるというのです。多少少なくなっているのではなく、水もキャットフードも半分以上も減っています。キャットフードもそうですが、普通なら水も半日でそれほど蒸発することはありません。また、猫のトイレを置いていた場所が、時々水をこぼしたように濡れているのです。気になって一度、その液体の臭いを嗅いでみたところ、おしっこの臭いがしたというのです。また、猫が亡くなった後も室内に置いている爪とぎが、爪を研いだ後のように削れて、床に落ちていることもあります。このような状況ですから、夜寝ているときに布団の上を歩いている猫の重さを感じることがしばしばあります。リビングのテーブルで食事をしているときに、足首のあたりを猫の毛が触れていく感触やざらざらした猫の下でなめられる感触を何度も感じました。ここまではっきりと亡くなった猫を感じるために、少し心配になって私に相談してきたのです。

「私がずっと猫のことを強く思い続けているから、このままでは成仏できないのではないか」

そう考えたのです。

 

人間が無くなったとき、肉体の無くなった魂はしばらくは現世にとどまって生まれた場所から死んだ場所までを何度も辿ります。そうやって自分の人生を総括して、自分なりに自分の人生(=生きていた時間)がどういうものだったのか自分なりに答えを出します。そして魂は納得してあの世へ上がります。ですから悔いを残さずに誠実に精一杯生きてきた人は、早くあの世へ上がって来世へ生まれ変わる準備をします。悔いをたくさん残してきたり、やり残したことがたくさんあって現世に執着しすぎると、あの世へ上がるには時間がかかります。私は故人のご家族から「亡くなった方とつながってほしい」と頼まれることが時々あります。私はあの世へ上がった魂とは、つながることができません。まだ現世にとどまって旅を続けている魂とは同調することができます。私がつながれる期間(=死んだ魂が現世にとどまっている期間)は、早い人だと49日ぐらいです。遅い人でも普通は3年ぐらいするとつながれなくなります。つながれなくなったということは、魂は成仏したということになります。

 

それでは猫はどうかという問題ですが、動物は人間ほど煩悩は多くありませんし、物事も考えません。感情はありますから怒ったり、喜んだり、悲しんだりはします。しかし、人間よりもはるかに本能にしたがって生きています。ですからその分、あの世へ上がる期間は短くなります。そして、人間でも暖かい気持ち(=ポジティブな思い)をどれだけ強く残して死んでも、魂はいずれはあの世へ上がっていきます。まだ、小学生の子供を残して亡くなった母親が、この子供たちが成人するまで、現世にとどまって守っていこうと強く思っても、魂はいずれはあの世へ上がり、そして輪廻転生することになります。それが魂の定めなのです。それは命あるものとして生まれてきた猫も同じです。この猫が飼い主を慕ってどれだけ一緒にいたいと思っても、いずれはあの世へ上がることが魂の定めなのです。私はこの方に話しました。

「今度、猫ちゃんがお部屋にやってきたときには、こう話しかけてください。一緒に過ごした時間は、ずっと忘れないからね。すごく楽しかったね、ありがとう。私は大丈夫だから、安心してあの世へ上がって行きなさい。生まれ変わったらきっとまた会えるからね」

そう話してこの方と別れました。

 


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