同じ地方新聞に、「親切な二人の女子高生に助けられた90歳のお婆さんが、どうしても二人にお礼を言いたくて二人を探している」という記事が載っていました。鹿児島市内に住む阿部惠美子さん(90歳)は、視力や聴力が弱く、杖をついてゆっくりと歩くことしかできません。惠美子さんはまだ残暑が厳しい9月30日、書留を受け取るために鹿児島中央郵便局までバスで向かいました。バスは午前8時前に鹿児島中央駅に着きました。ただ、バスは普段、惠美子さんが使わない駅西口に到着したのです。そのため道に迷った惠美子さんは目的地の郵便局まではなかなか辿りつくことができません。気温がだんだん上がっていく中で、疲労と不安でいっぱいになった惠美子さんは、涙を流しながらふらふらと歩いていたのです。
そんな惠美子さんを見かけた二人の女子高生がすぐに声を掛けました。そして惠美子さんに郵便局とは反対方向へ歩いていることを告げました。そして疲れて歩くこともままならない惠美子さんを抱えて、まずは鹿児島中央駅まで戻りました。するとこの様子に気づいた駅員が声をかけてきました。駅員は二人の女子高生に
「ここから先は私が連れていきますから、あなたたちは学校へ行きなさい」
と言って惠美子さんを引き取りました。そして駅員は車いすを用意して惠美子さんを乗せると、郵便局まで連れて行ったのです。
後日、惠美子さんは駅にやってきて、親切な駅員に感謝の気持ちを伝えました。ただ、同じようにお礼を言いたい二人の女子高生は、学校がわからないため連絡をすることができません。そこで惠美子さんは地方新聞の営業所に相談して、二人の女子高生と学校にも感謝を伝えたい思いを記事にしてもらったのです。
人に親切にすることは勇気のいることです。私も子供のころや学生時代は普通に困っている人がいれば声をかけることができました。しかし、いつのころからか、照れくささや人との関わりを嫌ってそのまま通り過ぎてしまうことが多くなってしまいました。今、振り返れば、もう何十年も見ず知らずの人にこちらから声をかけることはしなくなっています。こういう記事を読むと、私自身、暖かい気持ちになりますし、勇気をもらいます。若いころに当たり前にできたことが、年を取ったことによってできなくなるなんて悲しいことだと思います。次にどこかで困っている人を見かけた時には、必ず勇気を出して声をかけてみようと思いました。それは人として当たり前のことだったのです。今回の地方新聞の2つの記事では、ずっと忘れてしまったものを思い出させてもらいました。