マンデラ・エフェクトがどうして起こるのかは様々な原因が指摘されています。現時点で決め手になる見解は示されていませんが、認知科学の分野から「集合的虚偽記憶」として研究している科学者もいます。イタリアの認知科学者「ステファニア・デヴィート」は、爆破テロ事件によって故障したボローニャ中央駅の時計について、人々の記憶を辿り、集合的虚偽記憶の解明を試みました。この時計は1980年に起きた爆破事件によって一時的に故障したものの、すぐに修理をしたためにまた動き出しました。そして1996年まで動き続け、それから自然故障して動きを止めたのです。それ以降は、この事件を記憶に残すために10時25分で止まったまま保存されています。しかし、駅の職員や利用者を対象に聞き取り調査を行ったところ、9割以上の人がこの時計は事件発生から現在までずっと止まったままだと記憶していたのです。事件が発生した1980年から自然故障した1996年まで動いていたことは、ほとんどの人の記憶には残っていなかったのです。そして「ステファニア・デヴィート」は、集合的記憶の表象(=この場合は爆破事件という象徴的な記憶)が、関連する記憶に干渉して集合的虚偽記憶が起こると結論付けました。

 

他にはマンデラ・エフェクトを人間の記憶の不確かさによる虚偽記憶だとする説や他の記憶からの連想(=類似した記憶によって作り出された記憶)とする説もあります。実際、マンデラの獄中死の記憶は、同じく南アフリカで反アパルトヘイトの活動をして獄中死した「スティーブ・ビコ」の獄中死と混同した可能性を指摘されています。また、脳内で記憶の抽象化や再構築を行う際に、無意識のうちに記憶を捏造してしまう“作話”が行われているという説もあります。

 

いくつかの仮説の中で私は、“パラレルワールド説”に興味を引かれます。それは現実の世界と並行して存在するパラレルワールドに無意識のうちに移動した結果、現実の記憶と異なる記憶を持つ人が数多く現れたとする考え方です。パラレルワールドとは、ある世界(時空)から分岐してそれに並行して存在する別世界のことです。それはいわゆる魔界とか4次元の世界とは異なり、我々の宇宙と同一の次元を持つと考えられています。これはSFの世界の話ではなく、理論物理学の世界でもその存在の可能性が語られています。

 

それはスイスのジュネーブ郊外にある世界最大規模の素粒子物理学研究所である「欧州原子核研究機構(CERN)」やジュネーブ郊外のフランスとの国境をまたいで設置された世界最大の衝突型円形加速器「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」で高エネルギー物理実験によってパラレルワールドに対する干渉や改変が起きているという説がしばしば提唱されていることからも明らかです。もし、現実の世界と並行してパラレルワールドが存在するなら、何かの大きな力(=変数)が加わったときに、現実の世界の壁を越えてパラレルワールドに入り込んでしまう可能性はあります。そしてパラレルワールドに入り込んでいる時間は、現実の世界とは似て非なる空間に滞在していますから、現実の世界とは若干異なる景色を見て、異なる体験をしていることになります。その結果、多くの人たちが現実とは異なる記憶も持つ「マンデラ・エフェクト」がしばしば起きているのではないかと私は考えています。

 


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