太宰はその後、雑誌や同人誌に作品を発表して、創作活動を行うものの、酒と女、薬物に溺れた生活は一向に改善されず、精神病院に強制入院されています。そして太宰は28歳の時、津島家の親類の学生から太宰と肉体関係が続いていた芸者と、自分も不貞関係にあることを聞かされると、芸者と二人で水上温泉で薬物による自殺未遂を起こしました。それからこの芸者とは別れることになりました。この方もこの時期、酒の飲みすぎで体を壊して3か月ほど入院生活を送っています。そしてその時付き合っていた女性とも、この入院をきっかけにして別れています。
太宰は29歳の時、小説家「井伏鱒二」の紹介で、山梨県甲府市出身の地質学者の4女と見合いをして、翌年結婚しています。そして32歳の時に妻との間に長女が生まれ、35歳の時に長男、そして38歳の時に二女が生まれています。さらに38歳の時には、愛人との間に女児も生まれています。そしてこの方も入院生活を送っていた時に病院で知り合った看護師と親しくなり、29歳の時に結婚しています。そして32歳の時に長女が生まれ、35歳の時に長男が生まれました。
ただ、太宰は4人目の子供が生まれた後、39歳の誕生日を前にした38歳の6月13日に美容師で作家であった愛人の一人と玉川上水で入水自殺をしています。そしてこの自殺で太宰治の破滅的に生きた生涯は閉じたのです。二人の遺体は、自殺から6日後の6月19日、太宰の39歳の誕生日の日に発見されました。
ここまで読まれて皆さんもお気づきだと思います。私に相談した方は太宰治と誕生日が同じで故郷が近いというだけではありません。経済的に豊かな親元に生まれ、若いころから放蕩三昧を繰り返して、二人とも大学を退学になっています。太宰は生涯で4人の子供を儲けています。この方は2人の子供の父親になりました。そして二人が結婚した年齢や子供ができた年齢も同じです。太宰治とこの方は、人生の節目で起こる出来事の時期や内容も非常に良く似通っているのです。だからこの方は自分を「太宰治の生まれ変わりではないか」と考えたのです。
ただ、そうなると大きな問題に突き当たります。太宰は39歳の誕生日を前にして愛人の一人と自殺をして生涯を閉じています。この方が私に相談したときの年齢は37歳でした。もし、太宰治の人生とすべてが一致するとすれば、この方は1年後に女性と心中してこの世を去ることになります。彼は何よりもこのことを心配して私に相談してきたのです。この方が太宰治の生まれ変わりということが本当にあり得るのでしょうか。
私は人の輪廻転生のサイクルは30年から80年と感じています。太宰治が亡くなったのが1948年です。この方が生まれたのは1982年です。太宰の死後、34しか経っていません。理屈の上では死後30年以上経過していますが、自殺者の魂はあの世へ上がるまでに塗炭の苦しみを味わいながら長く現世にとどまります。ただし、私も何度か行いましたが、ご家族や支援者からの依頼によって、浄霊などの方法を使うことで、自殺者の魂もこの苦しみから逃れて早く成仏することはできます。さらに言えば太宰の最後の入水自殺は、その後の調べによって“愛人による無理心中説”や太宰による“狂言心中失敗説”も唱えられています。つまり、太宰が自分の意志で死に至ったのでなければ、自殺したことにはなりませんから、死後34年で来世に生まれ替わることも理屈の上ではあり得るのです。(3)へ続く。