以前非常に強い呪詛を受けていた女性がいました。身体に湿疹や蕁麻疹ができたり、かぶれて皮膚から体液が流れ出ることもありました。さらに体中の皮膚が焼けただれたように赤く腫れあがりました。彼女はもちろん皮膚科へ通い、病院では皮膚の炎症を抑える強い薬を処方されました。効果が強くても副作用を心配されるような強い抗炎症剤でも効き目はまったくありませんでした。しかも毎晩のように自分の身体が炎で焼かれるような熱さを感じ、苦しさと恐怖で一睡もすることができなくなりました。彼女はいくつもの病院を回り、何度も検査を受けましたが、原因は分かりませんでした。そして状況は一向に改善されずに、日に日に痩せて行ったのです。そして彼女の親御さんが娘を心配して人づてに私を頼ってきたのです。
私が本人と対面した時、すぐに呪詛を受けていることは分かりました。呪詛は彼女に恨みや憎しみの念を抱いている人間がいて、その力を呪詛のマントラや儀式によってさらに増幅してぶつけてきます。私には彼女と同年代の女性の念を感じました。この念の実体は”嫉妬心”でした。生霊はそれが事実であるかどうかに関わらず、それを出す本人の一方的な思いによって飛んできます。私がそのことを彼女に話すと同じ会社にお付き合いをしている男性がいることが分かりました。もう3年以上お付き合いをしているのですが、最近になって社内でそのことが分かってしまいました。そして今のひどい状態になったのも、交際が発覚してからのことです。私は社内でそのことに強く嫉妬している同年代の女性がいることは分かりましたが、一つ疑問が残りました。それは呪詛の念があまりにも強く的確に彼女に飛んできていることです。呪詛を引き受ける人間は、依頼者の嫉妬心を何倍にも増幅します。そのときは普通、呪詛の相手の気を入れた紙製や木製の人型や写真を燃えさかる炎の中に投げ込んでいきます。その結果、呪詛の念を受ける側は、炎に焼かれたような苦しみを感じたり、実際に皮膚が焼けただれたりします。しかし、ここまで強く影響が出ているのは、彼女本人に匹敵するような何かを呪詛の炎で燃やしていると考えられます。私は彼女に尋ねました。
「嫉妬心を増幅させて呪詛の念を送っている女性がいます。彼氏が同じ会社であれば、会社の同僚の可能性が高いのです。会社で最近、何か無くなったものはありませんか?」
すると彼女はしばらく考えた後、思い出したように口を開きました。
「そういえば、今の状態になる前に、ロッカーに入れていたヘアブラシが無くなりました。盗んでも仕方がないように思いましたので、どこかに置き忘れたのかと考えて、あまり気にしないようしていました」
私は一気に謎が解けた思いがしました。きっと彼女に呪詛を依頼した女性は、できる限り彼女本人に近いものとして、ヘアブラシに付いた髪の毛を使ったのです。それを呪詛を行っている人間に渡して、呪詛を行うたびに炎の中にくべていたのです。髪の毛は本人と同じ遺伝子でできています。普通は気を人型に移すのですが、髪の毛を燃やした方がはるかに強く呪詛の効果は出るのです。
私は以前、強い霊障を受けていた人を助けるためにその人の木製の人型人形を作りました。そしてその人形の中に本人の髪の毛を埋め込みました。そうすることによって死霊や生霊の攻撃が本人ではなく人形へ向かうように仕向けたのです。その結果、しばらくの間は効果を出して、霊の攻撃を上手くカモフラージュすることができました。しかし、これも長期にわたるようになると、新しいものに作り替えていかなければなりません。霊的に見ると髪の毛はあなたの身体の一部になります。あなたの分身のようなものですから、気を付けて取り扱ってください。