東京オリンピックが終わりましたが、最近、ニュースの中では、東京オリンピックに関連して2つの善意が話題になっています。一つは選手村から競技会場へ向かうバスを乗り間違えたジャマイカ人選手を助けた大会スタッフ「河島ティヤナ」さんの話です。8月4日、東京オリンピック男子110メートル障害の準決勝直前に、ジャマイカ人のハンスル・パーチメント選手は、競技会場となる新宿区内の国立競技場ではなく、江東区内の競技場にバスで到着してしまいました。そこから国立競技場へ向かうには、一度、選手村に戻らなければなりません。そうなると競技開始時間に間に合わなってしまう可能性があるため、ウォーミングアップをする時間は無くなります。ハンスル選手は、間違いに気づき、近くにいた大会スタッフに相談しました。するとスタッフの「河島ティヤナ」さんはハンスル選手にタクシー代として1万円を渡して、国立競技場へ直接向かうように促したのです。ハンスル選手は借りた1万円で、タクシーで国立競技場へ向かうことが出来ました。おかげでウォーミングアップをして競技に臨むことができたハンスル選手は、準決勝を通過。そして決勝でも13秒04のタイムで見事に優勝することができたのです。後日、ハンスル選手は自分を助けてくれたスタッフを探しました。そして河島さんを見つけると、借りた1万円を返した後、「あなたが助けてくれたから」
とお礼を言って、バッグの中から金メダルを取り出して河島さんに見せました。この話を聞いたジャマイカ政府は、8月19日にバートレット観光大臣を河島さんの元へ派遣しました。そして政府としてお礼を述べると共に、河島さんをジャマイカへの観光旅行へ招待したのでした。
もう一つの善意は東京オリンピックの陸上女子やり投げで銀メダルを獲得したポーランド代表「マリア・アンドレイチェク」選手の話です。まずこの方の善意を話す前にマリア選手を簡単に紹介しておきます。マリア選手は2018年に骨肉腫を患って手術を受けています。骨肉腫というのは、未熟な骨の形成を特徴とする多様な細胞腫瘍の一群のことです。強い痛みや腫れを伴うことが多く、5年生存率は70%といわれている重篤な病気です。マリア選手は自分の病気について、
「それほど重いものではなく、すぐに回復できると思っていました」
と述べています。そして
「健康になれば自分の力を発揮できる」
と考えていたというのです。普通なら心が折れても仕方のない状況でこのように考えられるのは、強い心を持ってポジティブシンキングのできる女性だったのです。
マリア選手は東京オリンピックで自身初めてとなる銀メダルを獲得しました。重い病気を乗り越えて、メダルを獲得したのですからそれだけでも人を感動させる話です。しかし、マリア選手がすごいのは、自分が大変な努力の末に獲得したたった一つのメダルを獲得した5日後に、そのメダルをネットオークションに出品すると発表したのです。しかもその理由は自分のためではなく、生後8か月の心臓病を患っている見ず知らずの男の子を助けるためだったのです。マリア選手はインターネットに書き込まれた男の子のご両親の助けを求める書き込みを見つけました。自分でも重い病気を患ったマリア選手はこの書き込みを読んで、迷うことなくこの幼児を助けることにしたのです。そして今、自分にできることとして、自分が獲得した銀メダルをオークションに出して、高額な手術費の足しにすることを思いついたのです。(2)へ続く。