先日、「緋色がずっと自分を追いかけてくる」と言って私に相談した女性がいました。緋色と言うのは色のことであって、人や物ではありません。緋色とは日の出の時の明け方の空のような黄色がかった鮮やかな赤色のことです。日本では古来より、赤色の染料として、茜(あかね)・紅花・蘇芳(すおう:黒みを帯びた赤色のことで植物の名前)の三種類が用いられてきました。このうち茜で染めたものを緋色と呼んでいます。赤の中でも特徴のある色ですから、普段なら滅多に見かけることはありません。ただ、この方によると、花火大会へ行けば、緋色の浴衣を着ている女性に何人も出会います。お店に入れば店内にかけられていた暖簾が緋色に染められていたり、たまたま送ってくれた友人の車が鮮やかな赤色(=緋色)だったりします。それはまるで自分の行く先々へ緋色が付いてきているように思えてならないのです。そしてついに最近は緋色の着物を着た少女が夢に出てくるようになりました。着物の素材はよく確認できませんが、決して高価な着物には見えません。質素な素材の着物ですが、茜で染めた鮮やかな赤色が体の小さな少女にとてもよく似合っています。その少女は頻繁に夢に出てくるのですが、いつも背中を向けていて顔は見えません。でも、町中で付いてきている緋色が夢にまで出てきたことで”何か意味があるのではないか”と思い私に相談してきたのです。

 

私はこの方の話を聞きながら、こちらに背中を向けて座っている少女がハッキリと浮かんできました。そして次の瞬間、この少女はこちらを振り返って私と目を合わせました。私は驚いて声が出そうになりました。なぜならこちらを向いた少女の顔は今、私の目の前にいる相談者の女性と同じだったからです。よく見ると、相談者の女性も小柄でかわいい方です。つまり、この方に付きまとっていた緋色の実体は、不浄霊でも生霊でも先祖霊でもなく、過去世の彼女自身だったのです。

 

過去世の自分が現世を生きている自分のところに現れることは、まれにあります。それは多くの場合、何かのメッセージを伝えるために会いに来ています。それも何代にもわたって繰り返された”輪廻転生”の中で解決できなかった深いご縁や因縁に関わるようなときに現れて、今度こそ進む道を間違えないようにメッセージを送ってくるのです。相談者の夢に現れた少女は後ろを向いているのでその表情はうかがえません。しかし、私の頭に浮かんだ少女はこちらを見ていますので、その表情や所作の中で明確なメッセージを示してきます。過去世の少女は笑顔で私を見つめています。そして何度もうなずきながら、私に依頼しています。私はその意味を考えました。そして相談者の女性に尋ねました。

「今、何か大きな岐路に立っていたり、ずっと悩んでいることはありませんか?もし、迷っているのなら、答えは”Go!”です。今度こそGoなのです。それは私が言っているのではなく過去世のあなたが、このご縁を信じて進むように私に依頼しています。迷わずに進むことが、過去世でできなかった課題を克服して、今世で幸せになることにつながるはずです」

私の言葉を聞いて相談者の女性は重たい口を開きました。

「実は今、私にはお付き合いをしている男性がいます。私はその方が大好きですし、相手も私を大切にしてくれます。私はいずれこの方と結婚出来ればと考えています。しかし、先日、勤務先の上司が私にお見合いの話を持ってきました。取引先の男性が、私を気に入ったようで、”正式に結婚を前提としてお付き合いをしたい”と上司に頼み込んだのです。私の気持ちは今の彼氏に向いていますからこの方とお付き合いするつもりはありません。でも上司が”自分の顔を立てて一度会うだけで良いからと頼み込んできたのです。上司にはお世話になっていますから、顔を立ててあげたい気持ちはあります。でも、彼氏がいるのにお見合いをすることは、今の彼氏にもお見合い相手にも失礼ですから、一体どうしたものかと悩んでいたのです」

私は事情を教えてくれた彼女に話しました。

「今、お付き合いしている男性がいることは、上司に話してみたらいかがですか。それでも上司が会ってくれと言うのなら、紹介者の承諾を得たことになりますから一度だけお会いしてみたらよいです。会っても何らピンとくるものが無いなら、それで終わりで構いません。でも、人のご縁はどこでどうつながっているのか分かりません。もし、お見合いをしてあなたが何か感じるものがあるなら、その時に次にどうするのかを考えても遅くはありません」

私がこのように話したのは、もちろんこのお見合い相手が、相談者の女性と何かのご縁があるように感じたからです。(2)へ続く。

 


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