四人は都心から中央高速道路に入り、河口湖インターから国道139号線で青木ヶ原樹海まで来ました。お昼ごろに出発して、途中で買い物をしながら3時には到着しました。途中で購入したものはおにぎりやサンドイッチなどの2回分の食事と飲料水、あとは荷物梱包用の長さ300mの白いビニールテープが2つ、そしてハサミ、方位磁石、懐中電灯と携帯電話充電用の携帯バッテリーを買いました。そして「西湖ネイチャーセンター」の駐車場に車を止めました。駐車場は夕方5時までしか営業していません。遊歩道を通って樹海の中に入り、もし5時までに駐車場に戻れないときは車の中で一夜を明かすつもりでいました。4人は遊歩道を歩きながら周囲の人がいなくなるのを待って樹海の奥へ進んでいきました。

 

4人は遊歩道を外れて樹海の中へ入ると持ってきた白のビニールテープを木の幹に巻つけながら進んでいきました。これは遊歩道へ戻る時の目印にするためのものです。森の中は緑色と茶色と黒で占められていますから、白のビニールテープはとてもよく目立ちます。遊歩道から300メートルも森の奥に入ると携帯電話は圏外になりましたが、食事も携帯電話のバッテリーも方位磁石も目印のビニールテープもしっかりと巻いてあります。そのため4人はほとんど恐怖を感じていませんでした。時折、冗談を言いながら暮れ始めた樹海の中を進んでいったのです。

「どこまで行く?」

「もちろん、遺体を発見するまででしょう」

辺りが暗くなり始めたため、そんなことを話し始めました。

「でも、キャンプの用意をしてきたわけじゃないから、樹海の中では眠れないぞ。ここの状況は分かったし、画像もたくさん撮ったから、まずは車へ戻らないか?」

一人の言葉に他の3人も同意しました。真っ暗になる前に戻った方が良いと全員が感じていました。そして4人は木の幹に巻いた白いビニールテープを頼りに来た道を引き返していきました。すると先頭を歩く一人が突然大声で叫びました。

「あれっ、木にしっかり巻いていたはずのビニールテープがない」

この一言に一瞬で全員が動揺しました。

「どっちだ?この木の次はどっちへ進めばいい?誰か覚えてないか?」

不安になった一人が慌てて確認しました。もちろん360度樹木しか見えない森の中で、来た道を思えている人は誰もいません。

「落ち着けよ、俺たちは西湖ネイチャーセンターから南東へ向けて歩いてきた。

だから帰りは北西へ向けて歩けば戻れるはずだろ。磁石はちゃんと動いているから問題ないよ」

この言葉を4人全員が心の中で反芻していました。外はすでに夜の暗闇が足元まで迫っています。デコボコの地面はしばしば足を取られるので、4人全員が持参した懐中電灯を点灯しました。そして4人は今までよりも早足で北西へ向けて足を動かしました。

「あった、白のテープが巻いてあるぞ」

先頭を進む一人が大声で叫びました。4人は少し安心して小走りにその木の元へ駆け寄りました。その時です。

「うっ、うわーっ、何だ!」

さっきまでテープを巻いた木の幹を力強く叩いていた一人が突然、叫び声を上げました。太い幹の大きな木の上から白い塊が突然落ちてきたのです。薄暗い森の中でもその白い塊と地面にぶつかる”ドカッ”という不気味な音はしっかりと4人の耳に届きました。

 

ビニールテープを巻いた木を見つけた嬉しさから、その木の幹を叩いたために、その木の上部にある枝にロープを巻いて首を吊っていたご遺体が折れた枝と共に4人の上に落下してきたのです。(3)へ続く

 


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