私は彼女の未来を霊視しました。私が感じた彼女の未来は実に悲惨なものでした。結局、安定した仕事に就くことができずに、アルバイトでその場をしのいできた彼女ですが、今から数年後にアルバイト先も無くなり、生活は行き詰まります。今までは彼女を心配して勤め先を紹介してくれた家族や友人も、そのたびに彼女が勤め先をすぐに辞めてしまい顔をつぶされてきました。もう勤め先を紹介するどころか、付き合いも無くなっていました。彼女は家賃も支払えなくなり、住んでいたアパートを追い出されます。行く当てもお金も無い彼女は、それでも生活保護の申請は出来ずにホームレスの集まる公園にいました。そしてボランティアの炊き出しの列に並んでいたのです。私の頭に浮かんだ彼女はとても50歳とは思えないほど老け込んでいて、老人のようでした。
~何かを変えて行かなければなりません~
彼女は今はまだ40代半ばですから仕事が無いわけではありません。しかも彼女は大学を出て最初に入社した会社では資格を持って経理をしていました。大企業に就職することは出来なくても、小さな会社であれば、彼女の能力を必要としている会社はあるはずです。そこで自分が会社から必要とされている人間であることが確認できれば、今まで遠回りをしてきた分、意気に感じて張り切って仕事をしてくはずです。ただ一つ、周囲の言動に過敏に反応してしまう自分を制御できるのかどうか、ポイントはその一点になります。私は彼女に話しました。
「率直に申し上げて、このままの生き方で進んでいく先にあなたの未来はありません。普通に生活を送ることさえままならない悲惨に未来が待っています」
彼女は黙って私の話を聞いています。
「ただ、この未来は運命的に動かしようのない未来ではありません。あなたの生き方や考え方、そして行動を変えて行くことで、いかようにも変えて行くことのできる未来です。ですからこれが最後のチャンスだと思って、強い気持ちで覚悟を持って自分を変えていっていただきたいのです」
「…………」
「あなたを今まで苦しめてきた心の声に惑わされないでください。あなたの心の中にある潜在的な不安感は、周りの人の声をディフォルメしてあなたに響かせています。あなたはその声に惑わされて、自分を苦しめて追い込んできました。しかし、実態は心に響いた声とは必ずしも一致しません。あなたを苦しめて人生をゆがませている声なら耳をふさいでもよいのです」
私は繊細で敏感な人が陥りやすい苦しみについて彼女に話しました。生まれた時から霊的な間口の広かった私自身、人が話す言葉とは裏腹な思いがいつも伝わってきて苦しんできたからです。人が信用できなくなり、人と接することができなくなり、自分の殻に何年間も閉じこもりました。今では表面的には普通に社会生活を送っていますが、その傾向はしっかりと残っています。私はこのようなタイプの方にアドバイスをする時に、個別の状況にもよりますが、「自分の心を強くして、周囲の状況に負けない自分を作るように」話すことはほとんどありません。多くの場合、むしろその逆のことをアドバイスします。
「強い人間ってどんな人だと思いますか?お金を持っている人?権力を持っている人?腕力の強い人?強い意思を持っている人?折れない心を持っている人?私にはどれもピンときません。私は若いころからガンガン仕事をして、どんな難題にも立ち向かって的確に処理してきたブルドーザーのようにパワーにあふれている人を何人も見てきました。そしてその多くは40代を過ぎたころに心が折れてしまい、再起不能なところまで追い込まれてしまいました。人はどれだけ強いように見えてもそもそも強くなんてないのです。ただ、歯を食いしばって頑張っているだけなのです。だから限界を越えれば心は折れてしまいます。そして心が折れてしまうと回復するまでには年単位の時間が必要になります。だから心が折れるまで頑張ってはいけないのです」(3)へ続く。