先日、私に相談された方は、霊的な間口が広いために他人の本音を感じすぎてしまい、その人の思いに応えようとして自分を疲れさせていました。別の方は、元々ものすごく繊細で敏感なために、自分に向けられた何気ない一言にいつも傷ついて落ち込んでいました。以前、自分は「カサンドラ症候群」という方から相談を受けました。「カサンドラ症候群(カサンドラ情動剥奪障害)」とは、身体的・精神的症状を表わす言葉です。これはアスペルガー症候群(知的障害のない自閉症)の夫または妻(或いはパートナー)と、情緒的な相互関係が築けないことによって、配偶者やパートナーの方に不安や抑うつ症状が出る状態を言います。分かりやすく言えば、献身的に相手との意思疎通を図り、相互理解を深めようとしているパートナーが、一向に状況が改善されずに報われない毎日を送るうちに自分の方が精神的なサポートが必要となる状態になってしまう症状です。また別の方は、私はHSP(Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)と言っていました。HSPとは環境感受性や感覚処理感受性が極めて高い人たちを表わす言葉です。これは分かりやすく言うと、感受性が非常に高いために、自分の周囲で起こるさまざまな出来事がとても気になってしまい、気持ちが落ち着かなくなったり、不安になったり、落ち込んだりしてしまう人のことです。HSPの人は、視覚・聴覚などの感覚が敏感で、周囲からの刺激を受けやすいのです。その結果、傷ついたり、生きづらさを感じてしまうことになります。このように感性が豊かで繊細であるために、自らを苦しめてしまう人が最近増えてきたように感じます。
以前、「転職をくりかえしてしまう」という人から相談を受けました。彼女は大学を卒業後に入社した会社には数年間勤めました。しかし、人間関係に疲れてその会社を辞めた後は、どの会社に入っても2年以上勤めたことがありません。早いときは3か月持たずに退社しています。彼女は最初は自分は”ツイてない人間だ”と思っていました。それはどの会社に入っても、嫌な上司や同僚に出会ってしまうからです。彼らは自分を嫌っているので、露骨に悪口を言ってきたり、無視をしたり、意地悪をしてくるのです。それでも我慢して働いているのですが、ついには辛抱できなくなって辞めてしまうのです。しかし、そうやって転職を繰り返すうちに、正社員として採用してくれる会社は無くなりました。やがて契約社員や派遣社員としても雇ってくれる会社はなくなりました。今はパートやアルバイトを見つけては、そこで働きながら何とか生活を維持しています。彼女の家族や友人は彼女のことを
「わがままで忍耐力の無い人間だ」
と責めます。
「どこの会社にも嫌な人はいるのだから、それで会社を辞めていたら長く勤められる会社なんてない」
と断言されます。彼女もそれは良くわかっています。しかし彼女は、彼女の言葉がたまたま聞こえなかった上司は、「自分を無視している」と感じてしまいます。そしてそれ以上、声を掛けられなくなります。何気なく冗談を言った同僚は「自分を嫌ってまた自分を攻撃してきている」と感じてしまうのです。それでも我慢して通勤しているうちに、朝起きるとお腹が痛くなったり、朝食を食べられなくなったり、箸を持つ手が震えだしたりしてしまうのです。ここまで追いつめられるともう出勤することは出来なくなります。周りの人から見れば、”ただ堪え性が無くてすぐに会社を辞めるわがままな人間”と見えるかもしれません。しかし、本人は精一杯我慢して働いた結果、やむなく退職しているのです。そして辞めた会社の数はすでに20社を越えてしまったのです。
それでも年齢は容赦なく重ねられて行きます。いずれ身体が動かなくなる時も来るでしょう。彼女は手元にあるわずかなお金だけが将来に対するすべての保証なのです。今まで年金もまともに払っていません。医療保険などの任意保険にも加入していません。いざとなったら生活保護を申請することも考えました。でも、家族や親族に連絡がいくことを考えると、そう簡単に申請する気にもなれません。全く先の見えない未来に何とか光を見つけたくて私に相談してきたのです。(2)へ続く。