「お酒を飲みすぎて、昨夜のことを覚えていない」と言う人がいます。私も学生時代や若いころに会社員をしていたころは、まさに浴びるほどお酒を飲んでいた時期もありました。ただ、私の場合はお酒は強かったのでしょう。どれだけお酒を飲んでも記憶をなくすことはありませんし、取り乱すような酔い方をしたこともありません。そして今ではお酒を飲むと翌日に残ってしまうので、翌日に余裕のある時だけ、たまにお酒を飲んでいるだけです。霊視にしても除霊にしても精神を集中して取り組まなければできません。お酒が残っていると集中できなくて良いパフォーマンスが取れないのです。それは自分として非常に不本意でストレスがたまります。それが分かっていて、お酒を飲む気持ちにはなれないのです。
酔って記憶をなくすケースは人によってはときどき発生しますが、以前、私に相談してきた方は、素面(しらふ)の状態で、何度も記憶を失くしてしまうのです。その方によると、ふと意識を失うような時間ができて、気が付くとなぜここにいるのか分からない場所に自分がいることがあるというのです。それは知らないお店であったり、駅のホームのベンチであったり、山の中の小道であったりします。仕事を終えて会社を出た後に、全く覚えていないのに気が付くと家のベッドで寝ていたこともあります。その間に自分がどこで何をしていたのか本人に記憶がないのです。ただ、これほど怖いことはありません。今は何とか無傷でその場所にいます。でも、途中で電車に轢かれたり、車に跳ねられたり、階段から転落しない保証はどこにもないのです。意識が無い状態で町を歩いていれば、どこでどんな危険に遭遇するか見当もつきません。この方は私に相談する前に、脳の検査や神経の検査も病院で徹底して行いました。しかし、原因は全く不明で悪いところは指摘されませんでした。それで怖くなって私に相談してきたのです。
私はこの方に話しました。
「自分が無意識のうちに知らない場所へ行っているのは、本当に怖いと思います。そこへ行くまでに何があったのか自分では何も分からないわけですから。私も最近は落ち着いていますが、まったく同じ症状が若い頃から10年前ぐらいまでしばしば出ていました。ただ、一つ言えることは、”この状態になっても、事故やアクシデントに巻き込まれて、命を落としたり、大けがをすることはありません”その点は安心していただいて良いと思います」
その方はすぐに私に聞き返してきました。
「自分では何をしているのか全く分からないのに、どうして大丈夫だと言い切れるのでしょうか」
私はゆっくりと答えました。
「それは人間は何十年も生きている間に、無意識のうちに生活習慣が身に付いているからです。たとえば道路を歩く時に歩道や道の端を歩くとか、駅のホームでは白線の内側を歩くとか、物を食べたり買った時には代金を支払うというのは、頭で考えて決めているのではなく、もう習慣として身に付いています。私も同じ状況を何十年も体験してきました。家に帰ったら携帯電話を失くしていて、電話をすると知らない町の知らないお店で忘れていたことがありました。その町には電車で3回も乗り換えなければ辿り着けません。私は無意識のうちに無事に電車の乗り換えを済ませて、レストランでは食事を注文して代金も支払っていたのです。ですから怖い気持ちは分かりますが、この状態が大きな事故や死に直結することはありません。あなたの寿命は平均的な日本人男性よりも長いはずですから」
私にそこまで言われてこの方は少し安心したようでした。
「これは何が原因で、私にはいったいどのようなことが起こっているのでしょうか?」
これは目に見える世界では普通は起きないことです。自分に起きていることを知りたいと思うのは当然のことです。私はこの問題が起こる理由やさまざまなケースについて、この方が納得するまでお話ししました。(2)へ続く。