先日、最近、夫を亡くされた方から、亡くなった夫が今、何を考えているのか教えてほしいと依頼されました。ご主人は電車で通勤中に突然倒れ、救急車で病院へ運ばれたものの意識を回復することなく、5日後に亡くなったのです。このご夫婦にはお子さんは無く、お互いに相手を思いやりながら、喧嘩をした記憶もないほど仲の良い夫婦でした。いつも二人で寄り添いながら暮らしてきただけに、突然、夫を失った奥さんの嘆きは強く、食事もままならないほどショックを受けていました。それでもそろそろ立ち直らなければならないと思い、ご主人のメッセージを聞くことで、そのきっかけにしたいと考えたのです。
亡くなった方とつながって”その思いを知らせてほしい”という依頼はしばしば受けます。私が霊視をするときは、意識の深いところで相手とつながります。それは顕在意識の底の潜在意識の底の集合的無意識とか暗在系などと言われる領域です。この領域をどのように呼ぶのかは人によって異なりますが、この世界を”霊界”のように考えている人もいます。私は意識をどんどん深く落としていきながら、相手の方の霊的な波長を探します。そこでその波長が私と大きく離れていなければ繋がることができます。この世界は目に見える三次元の世界ではありませんから、相手の方の肉体があるかどうかは関係ありません。人の霊的な波長は、生まれた時から死んだ後までと特別な例外を除いて変わりません。ですから相手の方が生きていても死んでいても同じように繋がることはできるのです。ですから行方不明の方を捜索している際には、相手の波長を感じ取って追いかけて行きます。その対象者まで上手く辿り着けた際に、相手が生きていることも死んでいることもあるのです。
私は気持ちを集中して相談者のご主人の霊的な波長を探しました。事前にご主人の画像を送ってもらいましたので、私がつながれることは分かっていました。ただ、予定通り上手く同調は出来ましたが、その思いがクリアに伝わってきません。ご主人は自分が死んだことを全く受け入れておらず、今の事態を飲み込めていないのです。ただ、感情を震わせて、喚き散らしているような状態です。それは地震計の針が大きく振幅している映像に似ています。悲しみや無念さは充分に伝わるのですが、まだ、落ち着いて自分の思いを語れる状態ではないのです。
それはまだ、ご主人が亡くなってから時間が経過していないことが要因になります。自分の死に際して、しっかりと準備ができて亡くなっている場合は、死の直後から死んだことを受け入れることができます。ですから残された家族や友人に対する思いを冷静に語りかけてくれます。これは病院に何か月も入院して、病状が少しずつ悪化して、やがて亡くなってしなうようなケースです。仮に意識が回復していなくても、病院のベッドに横たわりながら、自分の人生を振り返ったり、衰えていく肉体の状態を認識して、死が近いことを悟ります。こういう形で死を迎えた方は、訪れた死をスムーズに受け入れます。
それに対して突然の事故やアクシデントで急に亡くなってしまったようなケースでは、死の準備が全くできていませんから、死を受け入れる(=死んだことを認める)だけでも時間が必要になります。この時間は死に方やご本人の人生観、死生観によって変わりますが、長くかかるときは1年ぐらい時間が必要になります。今回、私に相談されたご主人は、まだ亡くなってから1か月も経っていません。その死に方を考えると、ご主人の思いを語ってもらうにはまだ時間が必要になります。そうは言っても自殺や殺害されたわけではありませんから、1周忌を迎えるまでには、自分の死を受け入れることは出来ると思います。そして愛する妻に対する思いを自分の言葉で私に語ってくれると思います。私はこのことを奥さんに伝えて、ご主人の成仏を祈りました。