前回の話のように亡くなったご先祖や家族が、ピンチの時に自分を救ってくれたというケースは多くあります。ただ、中には肉親の魂やご先祖以外のものが自分を守ってくれることもあります。

 

以前、私に相談された方は、本当にわずかなタイミングが良い方へずれて命拾いをしたのです。その日、相談者の男性は自家用車を運転して、高速道路を通って知り合いに会いに行く予定でした。もうすぐ高速道路の入り口という時に、車の前を何か茶色の生き物が横切りました。その瞬間”(車で)跳ねた!”と思うほどギリギリのタイミングでした。彼はすぐに車を路肩に停めて確認しました。道路に動物が横たわっていることはなく、車の周囲や下にもぶつかった形跡はありません。とりあえず、ホッとしてまた車を発進しました。すると高速道路の入り口の手前にある踏切がちょうど鳴りだして、遮断機が下りてしまいました。通過する電車は1両でしたが、そこで1分ぐらい待たされてしまいました。

 

踏切を通過して高速道路に乗って気持ちよく飛ばして行くつもりでしたが、なぜか2車線の道路は渋滞しています。カーナビを確認しましたが事故の情報は入っていません。車は渋滞したまま全く動かないので、ドライバーの何人かは車を降りて、前方をうかがっています。前の方から歩いて戻ってきているドライバーに声をかけました。

「何かあったのですか?」

すると

「事故だよ、トラックが荷崩れを起こして、そこに乗用車が3台突っ込んでいる。これはひどいよ、当分動かないな」

あきらめムードでドライバーは話しました。そうこうしているうちに、サイレンを鳴らした緊急車両が事故現場へ急行しはじめました。サイレンの止まった位置から推測すると、事故現場はすぐ先にあるようでした。

 

相談者の車はそのまま2時間も現場に停められました。やがて上空にはヘリコプターも飛んできました。

”これは大変なことになった”

相談者は事故に遭われた方の無事を祈りながら帰宅しました。

 

家に帰るとすぐにインターネットで事故の状況を確認しました。するとトラックに積んでいた工事現場の足場に使う鉄パイプが、走行中に荷崩れを起こして後続車を直撃したのです。そしてお二人の方が命を落としてしまったのです。そして事故現場は自分の車が止められた場所のわずか先だったのです。

”もし、あのとき、踏切で車が止められていなかったら…”

そう思った瞬間、恐怖で身震いがしました。そして相談者は考えました。

”あのとき車の前を横切った動物は何だったのか”

猫にしてはもう少し、大きかったような気がしたのです。その答えはすぐに出ました。狐です。今思うと確かに狐が飛び出してきたように思ったのです。もし、そうだとすればこの方は狐に命を救われたことになります。逆に考えると、この方の命を救うために狐が車の前に飛び出して、時間を稼いで踏切で停車させたのです。

 

この方によると実家の敷地内にはかなり古くからお稲荷さんが祀られていて、祖父母・両親ともに熱心にお稲荷さんを信仰していたのです。稲荷信仰では、稲荷大神の眷属(使い)が狐とされています。したがって稲荷大神がこの方を救うために眷属を遣わされてこの方を助けたのだと思います。自分のご先祖や肉親の魂でなくても、正しい信仰によって守られることもよくあることなのです。