本来なら、男の霊を取り込んでしまったスマホは、お焚き上げをして処分するのがベストです。ただ、スマホにはたくさんの情報が詰まっていますから、それをそのまま燃やしてしまうこともできません。私は、スマホは形が見えないように布で包み、何かの容器に入れて目に見えない場所で保管するように伝えました。そしてできるだけ早く私がうかがい、除霊を行ってスマホに入り込んだ魂を抜きます。それまではスマホは絶対に使用しないように伝えました。
ただ、相談者の方は、しばらくスマホが使えなくなるため、仲の良い方にそのことを伝えようとスマホを使ってしまいました。もちろん画像は開きませんでしたが、スマホから登録されている番号へ電話をかけてしまったのです。最初の2人目までは何の問題も無く会話することができました。ただ、3人目に電話をしている途中、突然、排水溝へ水を流すようなゴボゴボという不快な音が聞こえました。しかもその音は約2分間も続いたのです。やがてその音は男の低いうめき声に変わりました。相談者は驚いてすぐに電話を切りました。そしてスマホを近くに投げて手放しました。
やがてしばらく時間が経って気持ちも落ち着いてきました。この間は特にスマホにも自分にも異変は起こりませんでした。そこで何気なくスマホを手に取って電源を入れました。すると浮かび上がったスマホの待ち受け画面の右下に、黒いシミのようなものが付いています。気になってそのシミをよく見てみると、シミの中に窓の外からこちらを睨んでいた男の顔が入っていました。しかもその顔は不気味に薄笑いを浮かべています。驚いて、今度は先ほどよりも遠くへスマホを投げました。そしてすぐにタオルを持って来て、スマホをぐるぐる巻きにして、お菓子の入っていた空き缶へ入れました。そして缶の蓋をガムテープで何重にも巻いて、紙袋に入れて庭にある物置の中へしまいました。
ただ、その日から、背中の痛みは以前に増して激しくなり、寝ていると毎晩、この男に体の上に乗られて首を絞められました。手首や足首を掴まれて、寝室の中を引きずれました。朝、起きると、身体は布団から大きく離れて部屋の隅で目覚めました。首や手足には痣になるほど強く絞められた跡が残りました。背中の中心や全身に爪で引っ搔いたような痕が残りました。この方は、私がお宅へ伺うまでの間、痛みや悪寒で外出することができず、重病人のようにずっと布団の中で過ごしました。そして私の元には毎晩のように
「助けてください。殺されそうです」
という救いを求めるメールが届いたのです。
私は数日後に時間を作ってこの方の家を訪ねました。そしてまずはこの男の憑依を受けている身体から男の魂を剝がしました。ただ、強くつながってしまったこの不浄霊は、祓ってもまたこの方の身体に戻ってきてしまいます。したがって一旦、この不浄霊を鎮めて悪さができないように抑えました。そして家の敷地の4隅にはカミナリ水晶を埋め込んで土地に結界を張りました。それからスマホに残っている男の念を祓って一旦帰宅しました。
後日、10日間の浄霊を行ってこの男の魂をあの世へ上げました。除霊をしても祓った魂は現世にとどまります。強い思いや因縁因果があると、現世に残っている魂は、再び戻ってきて憑依してしまいます。それでは何度祓ってもきりがありませんから、祓った魂をあの世へ上げてしまわなければなりません。あの世へ上がった魂は、現世に戻ることは出来ませんから、浄霊によってこの問題はようやく解決できるのです。(3)へ続く。