会社に入ると、思った通りかなり強い霊の臭いが充満しています。元凶になっている不浄霊が波長の近い他の不浄霊も呼び込んでいて、複数の霊の痕跡を感じます。さらに霊ハク(=そこに住んだり関わった人が残していった強いネガティブな想念の塊)のレベルを超えた生霊も漂っています。そして、生霊は人ではなく、この場所に強い執着を持っています。不浄霊といい、生霊といい、この5階の事務所に執着を持っている人がいることは明らかなので、私は相談者に

「会社の社員で誰か亡くなった人がいないか」

尋ねました。すると答えは”ノー“でした。そこで私は相談者の会社がこの場所を借りる前に、どのような会社がここに入っていたのか、それを調べるよう頼みました。

 

しばらくして相談者から、今の事務所に入る前にこの場所を借りていた会社の情報が送られてきました。すると以前入っていた会社は6年前にこの場所で倒産していたことが分かりました。しかも、夜逃げ同然でこの事務所を引き払っていたのです。ただ、会社はつぶれていましたが、会社概要はネット上に残っていました。そこには以前の会社の経営者と役員になっている妻と思われる女性の画像も残されていました。画像を見ればその人の霊的な波長は分かります。波長が分かればつながることができますので、会社が倒産してからの状況も感じ取ることができます。

 

私は会社を経営していた夫婦を霊視して、この事務所にとどまっている死霊と生霊の正体が良く分かりました。今、この事務所で数多くの霊現象を引き起こしている死霊は、この場所で会社を経営していた男性の霊です。この男性は妻と二人で自宅で衣類や小物をインターネット通販で販売していました。それがとてもヒットして、一時的にたくさんのお金が入りました。そこで法人を設立して事務所もこの場所に借りて、スタッフも入れて事業を拡張しました。しかし、ヒット商品の開発は簡単にできることではありません。そのあとは制作した商品はまったくヒットせずに、在庫が溜まり、かさんだ人件費で赤字が膨らんでいきました。それを借金で埋め合わせて会社を回していましたが、ついには月末の支払いが用意できなくなって夜逃げをしたのです。そしてわずかな手持ちのお金で安いアパートを借りて、夫婦で債権者から隠れながらそこで暮らしていました。そのうちにこの男性は体を壊しましたが、病院へ行くお金がありません。薬屋で買った薬を飲んでごまかしていましたが、容態は益々悪くなりました。そして辛抱できなくなって病院へ行った時にはもう手遅れで、間もなく息を引き取ったのです。

 

この男性にとって会社を設立して、この場所に事務所を借りて社員を雇っていたわずかな期間が、人生で一番幸せな時間だったのです。周囲から“社長”と呼ばれて仕事をしていた時が今も忘れられず、死んでも魂はこの場所を求めて戻ってきているのです。今、日当たりの良い場所でも観葉植物がすぐに枯れてしまうのは、この男性のデスクがまさにその場所に置かれていたからです。霊がいつも佇んでいる場所ですから、それだけ強く影響を受けてしまい植物が枯れてしまうのです。

 

この男性の妻は今は地方にある工場の寮に住み込みで働いています。でもこの女性もここで会社を経営していった頃が一番幸せで、時間が空けばいつもその頃を思い出しているのです。その思いが非常に強いために、ふとした瞬間に思いが生霊となってこの事務所に飛んできています。この事務所に中に充満している香水の匂いや洗面所の鏡に映る中年女性は、まさにこの女性の生霊だったのです。“死霊と生霊”この二つの霊的な問題がこの事務所には強く関わっています。そのためまるで心霊スポットのようにこの事務所では霊障が毎日のように発生しているのでした。

 

私は経営者の霊は浄霊をしてあの世へ上げました。そして妻の生霊には事務所の中に結界を張ることでバリアを作りました。その後、この会社では不可思議な怪異は起こらなくなりました。