最近、私に相談した方は、家の中で続く不思議な現象が気になっていました。その方によると、お仏壇のお供え物が誰も触れていないのに変化しているというのです。この方はとても信心深く、お仏壇の両側には毎朝、一対の花瓶を置いて、お花を供えています。そしてお水やお仏飯などを供えたあと、必ずお灯明にろうそくを灯して、香炉にお線香を焚きます。仏教では、死者は喉が渇くと考えられていますので、お水やお茶は重要なお供え物になります。ろうそくの明かりは死者が迷わずに成仏するための足元を照らす明かりになります。死者は香りを食べると考えられていますから、良い香りのお線香をあげることも供養になります。また、天へ上がっていくお線香の煙は、この世からあの世へ続く道しるべであるという解釈もあります。この花立て、ろうそく立て、香炉は三具足と言われ、それを毎日使うことが死者の供養になると考えられています。
この方は毎朝の日課としてお供えをしてお仏壇に手を合わせています。お祈りが終わった後は、ろうそくの灯を消して普通に一日の生活を始めます。しかし、家事を済ませてお昼ごろにお仏壇を見ると、お供え物が減っているのです。コップに入れたお水が半分も減っているときがあります。茶碗に高く盛り付けたご飯がまるで誰かにかじられたように、部分的に削り取られているときもあります。この方の家は真言宗ですので、お線香は3本立てて供えます。(※天台宗も同様ですが、浄土宗や浄土真宗は1本を2つに折って供えます。また、折ったお線香を寝かせて供える宗派もあれば、立てて供える宗派もあります)その3本のお線香がすべて燃え切らずに、途中で燃え残っているときもあります。このような不思議な現象は、ここ半月ぐらい続いています。私によく相談される方ですので、精密機械や家電製品など電気に関係するものが、霊の影響で誤作動することはよくわかっています。ただ、今回の出来事は、電気とはまったく関係のないものですので、霊現象なのかどうかを見極めてほしくて私に相談してきたのです。
確かに霊の波長は電気の波長に近いので、霊現象として電化製品が誤作動することは良くあります。ただ、霊現象は電気に関係しない場所でも発生します。私が怪異が起きている家に行った時によく見かけるのは、水をかけたようにドロドロになっている盛り塩です。異常な出来事が続いたため、その場所を守るつもりで盛り塩を置いたのでしょう。しかし、塩にはその場を清める力はありますが、強力な不浄霊を祓うほど強い力はありません。そうすると不浄霊は、自分に対抗してきたと考えて、今までよりも強くおかしな現象を起こして自分の力を見せつけます。その結果、一晩で塩がびしょ濡れになってしまったのです。
私はこの方に、お仏壇で供養している方について尋ねました。するとこの方のお父さんが1年前に亡くなられていたのです。亡くなって1年ということは、まだ、魂は現世にとどまっている可能性があります。そうだとすれば、お父さんの魂が何かを知らせるために、不思議な現象を起こして訴えてきていることが考えられます。
私はお父さんの画像を送信してもらい、お父さんの魂とつながりました。思った通り、お父さんの魂はまだあの世へ上がっていません。そして同調したお父さんの魂は、“絶対に海外へ行ってはいけない”と連呼してきたのです。私は何のことかそこまでは感じ取れませんでしたので、お父さんの言葉をそのままこの方へ伝えました。私の言葉を聞いた相談者も
「私も家族も海外へ行く予定はありませんが」
そういって首をかしげました。
しかしそれから半月も経たないうちにこの方から連絡が入りました。この方の弟さんが会社から、中国に作った現地法人の責任者にならないかと打診されたというのです。サラリーマンとして考えれば、栄転になりますのでこの話を受けるべきかもしれません。しかし、私はお父さんが執拗に行かないように連呼していたことを思い出して、強く反対しました。また、弟さんの家族や相談者の方も皆、この話には反対しました。結局、弟さんは日本に残りました。この選択が正しかったのかどうかは、時間が経たなければ分かりません。ただ、弟さんが中国行きを断った後から、お仏壇での不思議な現象はピタッと無くなったのです。私はそれを聞いて、大げさでなく“弟さんは、亡くなったお父さんによって命を救われたのではないか”と感じたのです。