先日、ある地方銀行の待合室で順番待ちをしていました。月末で銀行は混んでいたためかなり長く待たされました。私は待合室の椅子に腰かけながら何気なくディスプレイに映し出されたこの銀行のCM画像を眺めていました。そこには20代前半の女性がオフィスで働いている様子が映し出されていました。この女性の周りには先輩社員や上司と思われる人たちがたくさん働いています。そのとき、責任者と思われる年配の男性が、電話に手を伸ばしながら大きな声でこう言ったのです。

「参ったなあ、誰も電話に出んわ」

するとオフィスにいた多くの社員が一斉に大声で笑い出したのです。最近はあまり見かけなくなった“親父ギャグ”ですが、部下たちが上司を忖度して、大ウケしていることは明らかでした。そしてこの女性社員も周囲の様子をうかがいながら、大声で笑い始めました。

そのときナレーションが入りました。

「実はこの女性社員は人に付いている“うそ発見器”が見えてしまうのです」

画面が彼女の目線に切り替わると、大笑いをしている社員たちの頭の上で、うそ発見器のメーターが、嘘に反応して大きく揺れていました。

 

彼女は次に町の洋服屋さんへ入りました。そこでワンピースを試着すると、対応に出てきた女性店員が笑顔で一言話しました。

「すごく似合う、それは最後の1着なんです」

彼女は笑顔で応えました。しかし、女性店員の頭の上のウソ発見器のメーターは大きく針が振れていました。

 

次は会社の同僚と思われる数人のメンバーと会合をしています。メンバーはそれぞれ話し始めました。

「私は料理が趣味なんです」

「子供って本当にかわいいよね」

「オレ、今彼女いないんだよね」

その時、彼らの頭のウソ発見器はやはり嘘に反応して針が揺れていました。

 

さらに彼女は映画館に彼氏と思われる男性と出かけて、席に座って映画を観ています。すると彼女は

「私のこと、好き?」

と隣に座る彼氏に尋ねました。すると彼氏はすぐに

「好きに決まってるじゃん」

と答えたのです。しかし、残念ながら彼氏の頭の上のうそ発見器の針も揺れていたのです。

 

彼女は夕闇の中を帰宅を急ぐ人たちと一緒に電車で家路に着きます。郊外にあるような駅の改札口を出ると、友人と思われる同年代の女性が二人待っていました。そして3人は居酒屋へ入りました。すると友人の一人は彼女を見て唐突に

「ねえ、太った?」

と尋ねました。そして屈託のない笑顔を見せました。するとその言葉に呼応するようにもう一人の友人が

「何なの、その服、全然合ってないんだけど」

そう言って同じように、優しい笑顔を見せました。彼女は何気なく二人の頭に目を向けます。すると二人のうそ発見器の針は、ピタリと止まったまま全く動かなかったのです。彼女はそれを見て、思わず涙を流しました。本音で話のできる人にやっと会えたことで気持ちが救われたのでしょう。その様子を見た友人たちは

「何で泣いてるの?変だよ」

そう言うと3人に笑顔が弾けました。そして画面には文字が浮かび上がりました。

“やっぱり地元がいいね、〇〇銀行”(2)へ続く。