先日、非常に強い不浄霊の影響を受けて、ほとんど自分の意思で動けなくなっている方のご家族から

「娘が家で暴れているのですぐに助けに来てほしい」

と依頼を受けました。この娘さんは霊的な間口が非常に広いために、2~3年に1回ぐらいの割合で強い霊障を受けてしまいます。このご家族は今から10数年前に人から紹介されて私に除霊の依頼をしてきました。最初にお会いしたときは、娘さんはまだ10代の思春期でした。その時から、除霊や浄霊を何度も行ってきたのですが、しばらくは落ち着いても、またどこかで不浄霊を拾ってしまうことを繰り返してきました。そのため外に出ることができずに、ほとんど家の中で過ごしています。それは自分の生活圏を離れた時に悪いものを拾ってしまうことが多いからです。間口の広さは私に近いぐらい開いていますが、霊に対する耐性は私の半分も持っていないのです。そして今回もたまたま家族と出かけた旅行先で、かなり悪い不浄霊を憑けてしまったのです。

 

連絡があった時は夕方の5時を回っていました。この日の夜はメール鑑定の回答を書くために時間は空けていました。私には、今まで何度もうかがったこの家の中で、娘さんが自分を失って大声を張り上げている様子がはっきりと浮かびました。それは昔、話題になった映画“エクソシスト”で主人公の少女が悪魔に憑依されているシーンと同じでした。私はお母さんに伝えました。

「今すぐにうかがいますから、お嬢さんから目を離さないでください。もし、暴れるようでしたら、押さえつけて動かないようにしてください。暴れた拍子に誰かを傷つけたり、自分が怪我をすることがあるからです」

私は、不浄霊に対抗する法具や経本、そして自分を守るアイテムだけ持って家を飛び出しました。

 

このご家族は千葉県の市川市に住んでいます。普段なら都心から車で1時間ぐらいで着ける距離です。しかし、ウィークディの夕方ですから、道が混んでいるのは明らかです。夕方のラッシュに巻き込まれたら、何時に着けるのか見当が付きません。私は思い切って、結界の張ってある車を使わずに、電車で向かうことにしました。

 

私は都心から市川へ向かうルートを考えました。それは都内から千葉方面へ向かう途中には霊的に危ない場所が何か所かあるからです。そこを通ることで、市川に着く前に私が霊障を受けてしまっては元も子もありません。普段なら秋葉原駅から総武線に乗り換えて市川へ向かうのが最短です。しかし、秋葉原駅と次の浅草橋駅の間には、私が最も警戒する“隅田川”が流れています。1923年の関東大震災では10万人もの方が命を落としています。被害は都内を中心に近県にも及びましたが、隅田川流域のこの辺りが、最も大きな被害を受けています。1945年の東京大空襲でもこの辺りを中心に10万人もの方が亡くなっています。このときはアメリカ軍が落とした焼夷弾によって大規模な火災が発生しました。人々は火災から逃げるために隅田川に飛び込みました。そして川面の下に沈んでいったのです。私にはその川の上を通過していくことはできません。

 

私は遠回りでも東京駅に出て総武線快速電車で錦糸町駅から総武本線に入るルートを選びました。このルートでも隅田川は越えますが、眼下に隅田川を臨むよりはましです。私は周囲に聞こえないように、電車の中でマントラをささやきながら隅田川を越えました。無事に錦糸町駅に着いてホッとしたのもつかの間、電車が荒川に架かる大きな橋脚を越えたとたん、また動悸がして冷や汗が出てきました。荒川を越えると東京都葛飾区に入ります。そしてすぐに新小岩駅に到着します。この駅はいつの頃からか自殺の多いことで有名になり、JRも多くの自殺対策を施さなければならない状況になっているのです。したがってこの駅では、他の駅では見られないような設備や対応がとられています。(2)へ続く。