私は今述べたことを相談に来たお母さんに話しました。そして早稲田大学に入りたいがために、全学部を受験するようなやり方は、結果として息子さんの人生を遠回りさせてしまうことを伝えました。しかし、思った通り、お母さんは私の話に言葉では同意していますが、本心は何も変わってはいません。息子さんが早稲田大学に合格しやすい学部と学科、そして受験方法を知りたいと思っています。私は息子さんの将来を観た時に、貴重な20代の6年間を遠回りしてしまうことに非常にむなしさを感じました。早稲田大学に合格するまでの2年間の浪人生活と、入学してから早稲田大学へ通っている2年間。そして早稲田大学を中退して新たな方向性を見出して、次の大学へ入学するまでの2年間で合計6年間になります。今、私がお母さんに受験方法と目指す学部学科を伝えることで、その先に息子さんの6年間の遠回りが浮かんできます。しかし、そこまで私が伝えても、この親子がその道を進むのであれば私にそれを阻止する権利はありません。それを決めるのは人生の主役である本人しかいないのです。
私の仕事は皆さんの人生を幸せにすることではありません。そもそも私に他の人の人生を幸せにするような力など備わっていません。私は皆さんの未来を観ることで皆さんの質問に答えて迷いを払拭したり、改善のために感じたことをアドバイスすることで軌道修正の手助けをすることしかできないのです。あとは皆さんが私の助言を良い意味で活用して、幸せな人生へ向かって進んでいくことを願うだけです。
人は自分が見たいものだけを見て、感じたい世界だけを感じて生きていきます。今、自分が望む未来が現実化したことによって、その先に大きな落とし穴があると伝えても、見たい未来を手に入れることしか頭には入りません。
ホームページでも触れていますが、今あなたが大好きになった異性がいるとします。あなたはこの異性と何としても交際したくて仕方がないのです。そのためこの異性と交際するきっかけを私に尋ねてきます。“どのような形でこの異性にアプローチすれば自分と交際することができるのか”そのことで頭の中は一杯になっています。私はこの二人が交際する未来があるなら、そこに至る道筋を観てそれを伝えることができます。ただし、交際した先に、ものすごく不幸になる未来が待ち構えているとします。私は自分が感じた不幸な未来があることは率直に伝えます。しかし、それでも今大好きな異性とあなたが付き合いたいなら、私はアプローチの仕方をあなたに話します。私はあくまでも自分の感じた未来を正直に伝えることしかできません。その先に不幸が待ち構えているなら、その方向へは進まないという方もいます。ただし、それは少数派です。私の話に幸せな未来と、その先の不幸な未来が混在しているとき、その両方を伝えても、多くの人は自分が見たい一瞬の幸福を感じるために、いずれ不幸になる道を選択してしまうのです。
“大好きな彼女と一緒に暮らせたらどれだけ幸せだろう”と、その未来だけを見ている人は、先ほどの早稲田大学に入学してから遠回りする息子さんと同じように、その先に待ち構えている落とし穴は頭に入りません。その女性とお付き合いをしている間は人生で最も幸せな時間を過ごすことができるかもしれません。そして二人が結婚する日は幸せの絶頂に立っているのかもしれません。しかし、その後、わずか2~3年で妻の浮気が発覚したらどうでしょうか。ひどい浪費癖で自分の稼ぎ以上に毎月買い物を続けているのかもしれません。また、大好きだった夫が結婚して3年後にちょっとしたきっかけで自分に暴力をふるうかもしれません。それ以来、暴力が止まらなくなり、日常的に痛めつけられながら、怪我を隠して生活していくことになるかもしれないのです。このようなことは決して珍しいケースではなく、現実にしばしば起こっていることなのです。