1996年に富山県氷見市に住む19歳の女性2人が行方不明になりました。二人は高校時代の同級生で、高校卒業後も仲の良い関係でした。二人は96年5月5日の夜9時ごろに家族に
「肝試しに行く」
と言って、車で出かけました。その後、夜10時ごろに二人の乗っている車が目撃されています。それから二人は友人に
「魚津市へ行く」
とメッセージを送ったあと、行方不明になりました。
魚津市内には“北陸随一の心霊スポット”と言われている廃業したホテルの建物が残されています。ホテル坪野は8階建てで広さは3300㎡もある大きなものです。そこは地元の人からが“坪野鉱泉”と呼ばれていて、暴走族や不良少年のたまり場にもなっています。建物の中は侵入者によって破壊され、敷地内の薬師堂は全焼する火災も起きています。そのため富山県警では、二人は坪野鉱泉へ行った後に失踪したと考えて、山岳捜索隊を組織して県警ヘリも動員して大規模な捜索を行いました。当時は暴走族に連れ去られて、監禁されたのではないかとか、北朝鮮に拉致されたのではないかといった憶測も流されました。しかし、二人の女性も乗っていた車も発見されることはありませんでした。
その後、2014年になって、この事件に関して複数の目撃者がいることが
分かりました。県警は3人の目撃者を特定して、2020年1月になって、聞き取りを行いました。目撃者は
「96年の大型連休中、深夜に海王丸パーク付近で女性二人の乗った車を見つけて、声をかけようとして近づきました。すると車は後ろ向きに急発進して、海に転落しました。そして怖くなってその場を立ち去って、通報もしませんでした」
と証言したのでした。
そして県警は、今年の3月4日に伏木富山港の岸壁付近の海底を捜索したところ、女性二人が乗っていたと思われる軽乗用車が発見されました。そして車内に複数の人骨が見つかったのです。そして3月11日になって、発見された軽自動車は、失踪した女性が使っていた車だと確認されました。車内に残された人骨は、損傷が激しくて、頭蓋骨や骨盤も残されてはいませんでした。ただ、大腿骨の一部から検出されたDNAによって、社内の人骨は失踪した二人のものと確認されたのです。DNA検査の結果や車内に残された遺留品によって二人の死亡が確認されたのは今年の4月18日です。実に事件発生から24年経って二人はようやく見つかりました。
女性二人の乗った車が目の前で岸壁から海へ転落するのを目撃していながら、通報しなかった目撃者は、警察から詳しく事情を聴かれました。しかし、24年も時間が経過していることで、車内から目撃者を犯罪と結びつける証拠は見つかりません。また、人骨さえほとんど残されていない状況ですから発見された女性の死因を特定することもできません。事件の真相は闇の中へ埋もれました。(3)へ続く。