先日、私に相談してきた女性は、
「呪いをかけられて、それによって殺されかけている」
と訴えてきました。彼女によると、最初は怖い夢を何度も見るようになったと言います。薄暗い森の奥に廃墟のような古びた教会が出てきます。教会の周囲には異様に枝のねじ曲がった木々が生い茂っています。その枝の何本かは途中で折られています。足元には折られた枝が何本も落ちていて、どの枝も尖端が血のような赤色に染められています。最初はそこで夢は終わり、目が覚めていました。
しかし、その夢はだんだん先へ進むようになっていきます。足元に転がる枝を見ながら、足は教会の入口へ向かって進んでいきます。すると教会の中から、パイプオルガンが奏でるバロック調のメロディーが聞こえてきます。そして入り口の扉に手をかけた瞬間に、枝にとまっていたたくさんのカラスが羽音をたてて一斉に飛び立ちます。パイプオルガンの音色もピタッとやんでそこで目が覚めました。
そしてしばらくすると、夢はさらに進んでいきます。入口のドアを開くと、正面の壁には十字架にかけられたキリスト像がかかっています。その手前に祭服(=キリスト教聖教者の衣装)を着た神父が、まるで自分を待っていたように、こちらを向いて立っています。室内には神父以外には誰もいません。入口から真正面の神父のところへゆっくりと近づいていきます。神父は刃渡りの長い剣を右手に持っています。口では小声で何かの呪文を唱えています。そして、剣が呪文に合わせて少しずつ上がっていきます。
今はそこで夢は止まっています。ただ、
「このままでは夢はさらに先へ進み、いずれは神父の持つ剣で自分の心臓を刺されて、その時きっと現実の自分も一緒に死ぬのではないか」
と、この女性はそのように心配して私に相談してきたのです。
また、この夢と同時に現実の世界でもおかしなことが起こるようになりました。まずは激しい音です。ラップ音のような軽く乾いた音ではなく、金属をこすり合わせるようなギリギリという嫌な音が室内に響きます。お風呂に入って自分の体を見ると、ぶつけた記憶はないのに、体のあちこちに痣ができています。また、痣の形はまさに剣で切られたように細く伸びていたり、それが心臓の真上にバツ印のように付いていたこともあります。
あとは悪臭です。押し入れの中やタンスの中やバッグの中から生ものが腐ったようなひどい悪臭がしばしば漂います。それは自分だけが感じているのではありません。電車内では周囲の人からおかしな目で見られたり、隣に座る人がこちらを睨みながら席を移動したこともあります。一緒にいた友人から、
「ひどい臭さだけど、バッグの中にいったい何を入れているのか」
と詰問されたこともあります。ひどい臭いが漂ってくると、それに伴っても息が苦しくなります。動悸も激しくなって家の中でも勤務先でも気を失って何度も倒れました。病院は何か所か行って、何度も検査を受けましたが、検査結果に悪いところは見当たらず、原因は全く不明です。
そこで霊能者を探して観てもらったところ、
「あなたは呪いをかけられています。今の状況はすべてその呪いのよってもたらされています。このままでは命にかかわることになります。ただ、非常に強いもので私では対応できませんので、誰か力のある方を探して、呪詛返しをしてもらうしかありません」
と言われたというのです。そして人づてに私のことを聞いて相談してきたのです。
私は彼女を前にして答えました。
「あなたに何か不浄霊などの霊体が憑依しているとは感じません。でも、目に見えない力、つまり広い意味で霊的なものの影響を受けていることは間違いないと思います」
そして私は霊的なものの実態を探っていきました。(2)へ続く。