先日、神奈川県厚木市の郊外まで、家の敷地内に結界を張るために、大量のカミナリ水晶を持参して車で出かけてきました。私の実家は神奈川県横浜市内にあります。同じ県内ですが厚木へ行くのは何十年ぶりです。そのとき郊外の県道を車で走りながら、思い出したことがあります。私がまだ大学生だったころに、友人が厚木市内の親戚のアパートに住んで厚木の大学へ通っていました。
私は夏休みに2年間アルバイトをして買った自慢の中古車に乗って、彼のアパートへ遊びに行きました。それから二人で車でドライブをすることになりました。私たちは国道129号線を南下して、大磯まで海水浴に行くことにしました。ちょうど国道へ出る田舎の道を進んでいた時です。二人して思わず、「アッ」と声を上げました。それは車に轢かれた猫の死体が道路の真ん中にペシャンコになってへばりついていたのです。私はハンドルを切って死体を避けて通過しましたが、後ろから車も走っていましたから、特に車を止めることもなくそのまま進みました。思わず、心の中で手を合わせずにはいられませんでした。
私たちは大磯の海岸で暗くなるまで遊び、それから厚木の彼のアパートを目指して来た道を引き返しました。するともう夜になっているのに、来る時に見た猫の死体は、まだ道路の真ん中に無残にへばり付いていたのです。私は思わず車を道の脇に停めて死体に近づきました。きっともう、百台以上の車に轢かれて、ほとんど原型をとどめていませんでした。私はこのままこの場所を通過する気にはなれず友人に尋ねました。
「家にスコップあるか?」
「大丈夫、叔父さんに借りてくる」
友人はそう言ってうなずきました。私たちは急いで友人のアパートまで戻り、段ボールの空き箱とタオル、そしてスコップを持って現場に戻りました。私たちは段ボール箱の中にタオルを敷き詰めて即席の棺を作りました。そして猫の死体を箱の中に入れた後、山へ向かって車を走らせました。それから山道から外れた人通りのない場所に穴を掘って猫を埋葬しました。
私たちは無残に死んだ猫の冥福を祈りながら帰りの道を車で進んでいました。すると現場から5分と離れていない場所で、車の真正面から猫が突進してきたのです。車の真ん前からこちらへ向かって走ってきたので避けようはありませんでした。その猫は私の車のフロントバンパーにぶつかり道路に転がりました。埋葬した猫と同じような毛色をした猫でした。私たちは、道路に倒れて動かない猫を確認した後、先ほどと同じように友人のアパートに戻り、段ボール箱にタオルを詰めて2つ目の棺を作りました。
「この猫、まるで自殺でもするように車の正面から、飛び込んできたよな。さっきの猫と何か関係あるのかなあ」
友人は怪訝そうに私に尋ねました。
「分からないけど、さっきの猫の隣に葬ってやろうか?」
私たちは、2つ目の棺を車に乗せて、最初の猫を葬った穴の隣にまた新しい穴を掘りました。そして翌日に、お線香を買ってきてお墓の場所で焚いて手を合わせました。
今回、厚木まできて、私はそんな昔のことを思い出していたのです。良いことでも悪い出来事でもそれが重なることはしばしばあります。幸運でも不幸でもそれが次の幸運や不幸を呼び寄せていることがあるのです。(2)へ続く。