先日、読んだ“琉球新報”の記事に、「2019年度沖縄子ども調査」の結果が載っていました。私が目を引いたのは、沖縄県内の高校2年生とその保護者の生活実態の報告です。それによると、“等価可処分所得”122万円以下の世帯では、生徒の5割がアルバイトを経験していて、その中の半数は平日に加えて土日も働いていたのです。等価可処分所得とは、世帯の可処分所得(=収入から税金や保険料を引いた実質手取り分の収入)を世帯人数の平方根で割った数字のことです。それが122万円以下ということは、分かりやすく言えば、とても困窮している世帯のことです。収入のある世帯の生徒はアルバイトをせずに、塾や部活動に熱心に取り組んでいる一方で、学費や昼食代のために働きながら高校生活を送っている生徒が多いことが浮き彫りになりました。

 

困窮世帯・非困窮世帯を合わせた高校2年生全体では、34・8%の生徒がアルバイト経験があり、平日に働く日数は、「3日」が28・6%、「4日」が13・8%、「5日」が4・7%もいました。40人学級で考えると平均で7人がほぼ毎日働いているのです。また、働いている時間は「4時間」が最も多く42・1%、

「7時間以上」という回答も1・2%いました。この回答からわかることは、アルバイトをしている生徒は、夕方4時~5時に学校が終わった後、夜9時頃まで働いてから帰宅していることになります。また、アルバイトをしている生徒の86・2%は、週末も働いていて、土日の2日ともに働いている生徒も48・2%もいるのです。

 

私に相談される家庭の中にも、高校3年生の女子高生が、平日は学校が終わってから、高校生が働ける夜10時まで毎日アルバイトをして、土日もフルに仕事をしているという娘さんがいました。この家庭は母子家庭でお母さんは毎日、フルタイムで仕事をしています。小さいころから家事の手伝いをするお母さん思いのお嬢さんです。彼女は大学受験を目指していてお母さんは、

「そこまで働かなくても学費はなんとかできるから」

と娘に伝えています。しかし本人は、

「私は頭が悪いから、国公立大学へは入れない。でも、大学で勉強したいから私立大学の学費を稼ぐために頑張っています」

と笑っています。

「お母さんに負担はかけたくないし、自分の夢は自分の力でかなえるものだと思っています。お母さんが毎日、頑張っている姿を小さい時から見てきたから、私が夢を叶えて早くお母さんを楽にしてあげたい」

私に力強くそう話しました。私は彼女に、

「コロナで仕事が減っているでしょう。あなたのアルバイト先は大丈夫なの?」

と尋ねました。すると彼女は、

「今までの家の近くのアルバイト先はコロナで仕事が無くなりました。そのときは焦りましたけど、家から電車とバスを乗り継いで1時間半かかる隣の市内で新しいバイト先を見つけました。最初は通うのが大変でしたけど、慣れてきたら、ちょうど通勤時間が勉強時間になるから、却ってメリハリがついて勉強がはかどるんです」

そういって笑顔を見せました。屈託のない明るい笑顔です。

 

彼女は大学受験を考えると、勉強時間が絶対的に足りません。そのことによって難関校へ入るのは確かに難しいかもしれません。しかし、こういう学生は大学に入ってから伸びます。彼女は、明確な目的意識を持ってそれを継続できる強さがあります。目的達成へ向けて自分でその方策を考えて実行することができます。そして、自分に与えられた時間を有効に活用するすべを知っています。今は厳しい生活を強いられていますが、きっと大学生になり、社会人になってから力強く自分の人生を切り開いていくでしょう。

 

私は先日のブログで、自分に無いものを求めて欠乏感をため込むのではなく、今の自分にあるものに目を向けて、それを大切にしていくことが必要だと話しました。彼女はまさに自分に与えられた環境を否定するのではなく、言い訳を作るのでもなく、その中で力強く最善を尽くしているのです。

 

私が最近見た“今どきの若者”は、自分の夢や目標へ向けて、まっすぐに生きている素晴らしい人間たちでした。