先日読んだ加藤諦三さんの著書には、“仕事や人生に悩みを持っている人は、「本当の自分」と「理想の自分」の乖離に苦しんでいる”と書いてありました。
言い方を変えれば、“本当は自分がどういう人間なのか”“自分には何をすることが向いているのか”自分を客観的に見ることができていないということです。加藤さんは、その本の中で“自分はモグラなのに鳥を見て空を飛びたいと言っている状況”と述べています。確かにモグラは地面を掘ることが得意なのですから、鳥にあこがれるよりも、穴を掘り進める方が向いています。羽のないモグラが空を飛びたいと願うことが苦しみを生み出しています。まずは本当の自分を素直に見つめ、自分を良く知ることがスタートです。
そのためには自分の長所や短所、長く継続できたことや逆に継続できなかったことを良い面と悪い面に別けて書き出してみるとよいです。なぜ書くのかといえば、書きながら自分の頭を整理できるからです。
たとえば、学級委員長を何度も経験した人や部活動でキャプテンを続けてきた人は、リーダーシップがあって周囲からも良い評価を得てきたことになります。ですからプロジェクトリーダーやお店の店長として、部下やスタッフを引っ張っていくような仕事が合っています。
運動部のマネージャーをしたり、弟や妹の面倒を見ることが苦にならなかった人なら、誰かを支援したり、部下を育てるような仕事が合っています。もちろん、自動車の運転が好きな人がドライバーになったり、機械いじりが好きな人がエンジニアになったり、料理の好きな人が調理師になることができれば、それに越したことはありません。好きなことを仕事にすることができればそれはやりがいにつながります。以前、このブログに書いたように仕事の中に“feel good”を多く見つけることができれば、それは仕事のやりがいにつながります。
あとは、心理学者のアルフレッド・アドラーが言うように「共同体への貢献」は、その人の喜びや幸せにつながります。社会や会社や仲間たちが喜ぶような行動をとることは、その人の幸せにつながるという考えです。
しかし、どのように考えても今の自分の仕事にはやりがいも生きがいも感じられないという人もいます。私はそういう人には次のように話しています。
「自分自身のやりがいや生きがいは、仕事ではなく、違う分野に求めてください」と。
自分の仕事の中にそれを見出すことができれば、仕事を通してやりがいや生きがいを感じることはできます。仕事は人生を生きる上でとても重要なものです。ただ、仕事が人生のすべてでないことも確かです。
音楽を演奏して周囲の人を喜ばすことに生きがいを感じるなら、まずは音楽を仕事にすることを目指します。しかし、現実にそれはとても難しいことです。しかし、音楽は仕事でなくても演奏することはできます。老人ホームでも学校でも駅前の広場でもあなたが奏でる音楽を聴いて笑顔になる人はたくさんいるでしょう。それはあなたにとって大きな生きがいになります。
自分の住む町がきれいになって、町の人々の笑顔を見ることに喜びを感じるなら、早起きをして駅前の掃除をしたり、週末は友人たちに声をかけて海や川のゴミ拾いをしてみればよいです。つまり、仕事は社会人の責任としてしっかりと行う中で、やりがいや生きがいは、仕事以外の時間を使って感じてください。そしてそこで感じた生きがいをモチベーションにして仕事も頑張るという循環を作り出していくわけです。