“継続は力なり”とはよく言ったもので、同じことを続けていくことは、最も簡単で最も難しいことです。そして、人生を安定させて良い未来を作っていくためには必要不可欠なものです。人間の能力には様々なものがあります。超能力も一つの能力ですし、体が丈夫なことも、頭脳明晰で判断力に優れていることも、立派な能力の一つです。しかし、私がたくさんの人生を見てきた中で、愚直なまでに一つのことを継続してやり続けることのできる人は、ほぼ例外なく幸せに生きています。(もちろん、その人の人間性や性格・人生観に大きな欠陥がある場合は異なります。)私から見ると、この“継続力”が、幸せな未来を作る上で、もっとも重要な能力に思えます。

 

それはどのような分野でも、成功して一つの形を作り上げるには時間がかかるからです。逆に言えば、他の人より技術を習得するのに時間がかかる人でも、才能が多少劣っていても、諦めないでゆっくりでも前進し続けていくことができれば、必ずゴールには辿り着けるのです。

 

才能豊かで短時間でブルトーザーのように大量の問題を処理していく優秀な人間でも、この継続力が無い人は大成できません。新入社員のころには同期の同僚の中で成績トップを走り、“将来の出世は間違いない”と言われていたエリート社員がいます。周囲からも期待されていた優秀な社員でも、継続力が無ければ、たった一度の失敗で心が折れてしまったり、壁にぶつかって諦めてしまうこともあります。入社して30年後に周囲を見渡した時に、新人の頃にはまったく目立った成績を出していなかった社員が、その継続力を持って大出世を果たしていた例はいくらでもあります。それは本来の能力が劣っていたとしても、継続力のある人は成長していくことができるからです。だから初めは自分よりも能力の高かったエリート社員でも、時間をかけて追い抜いていくことができるのです。継続力=成長力だと考えます。

 

私も子供のころからたくさんの趣味や習い事に時間と労力を費やしてきました。大人になるにしたがって、自分の能力に限界を感じたり、現実の生活に追われる中で、それらはどんどん手放していきました。しかし、もしずっとその世界を追求し続けていたらどうなっていたのか。その道のプロとなって生活の糧を得ることができなかったとしても、きっと今よりも何か得るものは多かったように思います。

 

たとえばその世界で一目置かれている料理人や大工さんを見てください。60歳を過ぎた年季の入ったご主人は、きっともう何十年間も朝から晩まで同じことを繰り返してきたはずです。それは一見すると単調で面白みのない作業に見えるかもしれません。しかし、平凡でつまらなく思える毎日の繰り返しが、その道を究めていくための唯一の道のりなのです。

 

それは毎朝、通勤電車に揺られて会社勤めをしているサラリーマンも同じです。毎日同じ電車に乗って何十年も同じ会社へ通い、仕事をして家路につく。この単調な繰り返しによって、仕事を覚え、人脈を広げ、自分の信用を築き上げていきます。そうやって仕事を安定させることは、人生の基盤を作り上げる大切な作業なのです。経済的な自立失くしては、精神的に自立をすることはできません。仕事をすることは、自分の人生を安定させることに直結しているのです。

 

毎日、さまざまな刺激や変化にあふれる暮らしは、一見すると愉快で魅力的な毎日に思えます。しかし、楽しい毎日に浮かれて過ごすことよりも、地道に今の自分にできることを繰り返し積み上げていくことが、幸せな未来を作る上では重要なのです。