先日、私に相談された方は、「おそらく私に何か憑いているものがあるのでそれを見てほしい」というものでした。霊の憑依を受けていても、誰もがそれをはっきりと認識できるわけではありません。体に明確な影響が出ないまま、何か普段とタイミングがずれているとか、物事がうまく進まないといった消化不良な状態が何年間も続いているということもあります。皆さんの肉体や精神にはっきりとした異変が出ている場合、それは霊障の程度としては、かなり進んでいると考えた方がよいです。この状態からさらに強く影響が出ると、今度は何かの音や言葉が聞こえるという状態や視覚的に何かが見えるということになります。ここまでくると普段の生活にも大きな支障が出てきますから、すぐに対策を施すことが必要になります。

 

私に相談された方もこのような段階を進んでこられました。最初のうちは人間関係で常に問題を抱えるようになり、やがてそれは仕事にも影響が出るようになりました。そのうち、何もしていないのにものすごく疲れやすくなり、何かをやろうとする意欲が減退してきました。そのころになると時々、耳鳴りやめまい、そして動悸がするようになりました。やがて耳鳴りの音が変化してきて、お寺の梵鐘や鈴の音が響くようになりました。さらにその音は、女性の鳴き声や嗚咽に変り、今では時々、はっきりとした言葉が聞き取れるようになりました。それは女性の声で

「お前を絶対に許さない、許さない、許さない、殺してやる」

と叫んでいたのです。

 

それと共に、最近では人の視線を感じたり、ふとした瞬間に女性が現れては消えるというのです。それはいつも30代のショートカットの小柄な女性でした。同じ女性をいろいろなところで見かけるのです。たとえば街を歩いているときに、お店のショーウインドウのガラスに映っていたり、電車のドアのガラスに映っていて、驚いて降り向いたことが何回もあります。お風呂に入っていて髪を洗い、浴室の鏡を何気なく見たところ、笑いながらこちらを見ていたことがありました。洗面所の鏡を見ながら洗い髪を乾かしていると、同じように一瞬、この女性の姿が移り込んでいるのです。そのたびに、慌てて見直すといつも消えていて、そこには気配や独特の香水の匂いだけが残されているのです。

 

飲食店に入った時に、箸やおしぼりが一人分多く置かれたことが何度かあります。気味が悪いので

「私、一人ですけど」

と店員に言ったこともあります。すると店員は

「あれ、ショートカットの女性はお連れさんではなかったの?」

と聞き返されます。そしてそんなとき、席にはいつもの香水の匂いが漂っています。

 

最近も一人でタクシーに乗った時に、運転手がいつまでもドアを閉めないので怪訝な顔をしていると、

「彼女はご一緒じゃないのですか?」

と聞かれました。

「私、一人ですけど」

そういって開いているドアから身を乗り出して周囲を見回すと人影は誰も見えません。ただ、いつもの香水の匂いが漂っているのです。ここまでくると、さすがに何か自分に憑依している霊がいるのではないかと考えて、私に相談してきたのです。(2)へ続く。