鏡は霊の世界へつながる入り口であるとか、合わせ鏡は霊道を作り出すと言われています。私が子供のころに、祖母が三面鏡には必ずカバーをかけていたのを思い出します。それは魔が入り込むからという理由で、子供ながらに鏡には何か霊的な力を感じたものでした。実際、私は霊や念に対抗する(=本人を守る)アイテムとして、魔鏡というものを用いています。これは特殊な鏡に念やパワーを念じこめながら経文を書き込んでいきます。その鏡は一旦、粉々に砕きます。そして砕けた破片を1枚1枚カーテンレールなどに丁寧に張り付けていきます。そのカーテンレールで室内やベッドの周囲を囲いその中に安全地帯を作り出します。強い霊障に悩まされて、毎晩のように不浄霊が入り込んでくるという方にこの方法を施したことが何度もあります。中には魔鏡の力で昼間も守ってほしいという方に、コンパクトの鏡に経文を書き込んで携帯してもらったこともあります。鏡には文字通り、悪いものを跳ね返す力があるように思います。そこにマントラや念を込めればそれはさらに強力になります。

 

先日、私に相談された方は、鏡の中でしばしばおかしな現象が起きているといいます。それはここ数年の話ではなく、もう10数年も前から続いているのです。それは特定の鏡ではなく、家の中に置かれたすべての鏡で起きています。たとえばお風呂上りに浴室の隣の洗面所で髪の毛をとかしているとき、浴室のドアはしっかりと閉まっているのに、洗面所の鏡に湯気のような白い煙がもくもくと立ち上ります。驚いて振り返ると、洗面所の中に煙はまったくありません。そしてもう一度、鏡を見ると、そこに白い煙は映っていないのです。

 

そんなことが何度か続いた後に、化粧台の鏡で髪の毛をとかしていると、鏡に映った自分の顔がだんだん歪んでくるのです。何か汚れでもついているのかと思い、タオルでゴシゴシ拭いてもゆがみは取れません。そのうちに自分の顔はまるで”ムンクの叫び”のように大きく変形してしまうのです。驚いて化粧台の前を離れて、他の部屋の鏡を見ると何も異常はありません。恐る恐る化粧台の前に戻ると、今度は普段通りの自分の顔が映っています。

 

時には出かける前に鏡を見ながら身なりを整えていると、自分の後ろに古い時代の服装をした女性が立っていることもあります。それもただ、無表情でこちらを見つめているときもあれば、怒りに燃えた目つきでこちらを睨んでいるときもあります。白髪頭の老女がうつむいているときもあれば、戦地へ出征していく日本人の兵隊が立っているときもあります。それらは何気なく鏡に目をやった一瞬、鏡に入り込んできます。そしてその場を離れればたいていは消えているのです。気持ちが悪いことは言うまでもないのですが、特にそれ以上、体を傷つけられるようなことはありません。したがって不快に思いながらもずっとそのままにしていました。

 

しかし、ついに最近になってこの方は洋服ダンスの扉の内側の鏡に恐ろしいものを見つけてしまいました。タンスの扉を開けた瞬間、内側に取り付けられた鏡には、黒い縁取りに黒いリボンのついた自分の遺影が映ったのです。それも年老いた自分の顔ではなく、現在の自分の顔に黒いリボンと黒い縁取りが付けられていたのです。この方はさすがにこの状況に不安になりました。そして人づてに私を紹介されて、相談してきたのです。

 

私はお話をうかがいながら、この問題が霊的なものによるものであると強く感じました。そしてこの方の家の周囲や室内を確認する中で、問題の原因が鏡ではなくこの家にあることがわかりました。鏡は私自身、魔鏡として用いているように霊的なものに対する力があります。しかしそれを裏返すと、鏡を通して霊的な世界とつながることもまたあるのです。