人の思いはポジティブなものよりネガティブなものの方が重くのしかかります。普通は死んで肉体を出た魂(=霊)は人生を総括した後、あの世へ上がって輪廻転生の準備に入ります。しかし憎しみや嫉妬や恨みといった強いネガティブな思いを抱いている魂は、あの世へ上がる時間がかかってしまったり、ひどいケースでは今世に執着してあの世へ上がれなくなることもあります。
ただ、あの世へ上がれなくなるほどのネガティブは並大抵のレベルではありません。人間誰でも誰かを嫌ったり、憎んだりすることはあります。中には強いハラスメントを受けたり、犯罪の被害者になって、相手を呪うほど憎むときもあります。それでもそのレベルの憎しみなら、あの世へ上がる時間が多少長くかかったとしても、いずれは成仏して輪廻転生のサイクルに乗っていきます。
私が浄霊を行うときには、元凶となっている不浄霊がどうして現世に留まることになったのか、その理由を特定します。いつ・どんな出来事によってこの霊は現世に執着したのか、その理由がわからなければ不浄霊と対峙して諭すことは出来ません。そして不浄霊となって現世に執着した理由は、100%筆舌に尽くしがたいほどの凄惨な出来事が起こっています。その多くは命を奪われているとか、それも自分だけでなく配偶者や子供の命までを理不尽に奪われているようなケースです。その恨みの深さは想像を超えたものになります。そこまで強い憎しみは、当事者の相手にとどまらず、その子孫までも憎しみの対象をして不幸を背負わそうとするのです。よくテレビの時代劇で、理不尽に命を奪われる人が、いまわの際に「末代までも呪ってやる」と言って事切れることがあります。こういったことはドラマの中の話ではなく、実際にあることなのです。
ただ、最近除霊や浄霊をしていて思うのは、魂が成仏できずに現世に留まっている理由に凄惨な殺人事件以外の理由が増えてきたように感じます。もちろん、あの世へ上がれないほどの重たい執着ですから、憎しみや恨みは相当強いものです。それもしばしばあるのは”家族間のトラブル”なのです。
嫁姑のいじめは昔からありました。夫婦の仲が良くても舅や姑との折り合いが悪くて離婚に至ることもしばしばあります。舅さんや姑さんと同居しているお嫁さんは、一つ屋根の下で一日中一緒に暮らしていますから、ハラスメントを受けた時の逃げ場がありません。また、多くの場合、舅さんや姑さんはお嫁さんよりも立場が強いので、お嫁さんは理不尽な嫌がらせを受けても言い返すこともできません。したがって舅や姑に対する恨みの思いは、何十年にもわたって鬱積していくことになります。
ただ、その力関係は生涯変わらないこともありますが、途中で逆転することもあります。先日、除霊をした際に、元凶になっていた不浄霊は姑さんがお嫁さんを恨んだものでした。この二人の関係も、最初は姑が20年近くにわたってお嫁さんをいびっていました。しかし、その姑さんは、ある日、脳梗塞で倒れてしまい、寝たきりになってしまったのです。そして家族は姑さんの介護をお嫁さんだけに押し付けて、知らん顔をしてしまったのです。
そこから約20年にわたり、今度はお嫁さんの復讐が始まったのです。わざと熱いお茶や汁物を体にこぼしたり、箸の先やフォークで何度も体を突き刺しました。体に傷ができても、入浴もお嫁さんが入れていたので虐待は誰にも気づかれません。家族もお祖母さんの部屋にはたまに顔を出すだけです。そしていつもお嫁さんがお婆さんに付き添っていましたので、お祖母さんは虐待されていることを家族に訴えることもできなかったのです。今のようにヘルパーや訪問介護がある時代ではありません。姑さんは死ぬまでお嫁さんに虐待を受けながら恨みを募らせて死んでいったのです。そしてその恨みの念の強さゆえにあの世へ上がることもできずに、お嫁さんの子孫、つまり、自分の子孫に災いをもたらしていたのです。
こういった状況を目の当たりにするたびにとても陰鬱な気持ちになります。人をいじめ抜いて、復讐されて、その因縁因果が子孫にまで及んでいるのです。人に何かをすれば良いことも悪いことも必ず自分に返ってきます。人にも自分にもいつもやさしい気持で生きていきたいと思います。