自分でもどうしてだか理解できないままに、家や土地に呼ばれていることがあります。縁には良縁も悪縁もありますから、それが良いご縁なら、呼ばれたままにその土地で暮らすことは幸せにつながります。しかし悪いご縁や因縁因果によって引き寄せられているケースでは、そこで暮らすことで、人生はさらに悪いものになり、さらにそこに縛られます。最近もそのようなご相談を受けましたが、こういったケースは意外とあるものなのです。
私に相談された女性は実家に強く引っ張られていました。その方は学生時代にも社会人になってからも、実家を何度も出て生活しています。それは子供の頃から実家の人間関係ではなく、家そのものに強く引っ張られている感じを彼女自身が持っていたからです。そして、その因縁は、自分の人生の足を引っ張るものであると感じていたからです。ですから大学受験の時は、わざわざ家から通えない地方の大学を選びました。親にはこの大学にしか、自分の勉強したい学科はないと嘘をついて、地方の大学ばかりを受験したのです。もしろんその目的は東京の実家を離れて生活することです。大学時代は首尾よく実家を出て生活することができました。ただ、大学を卒業して就職試験を受けたとき、地方に本社のある会社をわざわざ受験して採用されたものの、1年もしないうちに東京勤務を言い渡されたのです。しかもその勤務地は実家から電車で30分で通える場所でした。ご両親は喜んで家から会社へ通うように勧め、それを断るための正当な理由もないため、実家に戻ることになったのです。
実家から会社へ通っていたこの方は、やがて社内に恋人ができました。この会社の本社は地方都市にあって、恋人は本社に勤めている男性でした。彼女はこの男性とお付き合いはしていましたが、遠距離恋愛と言うこともあって、それほど強く愛し合っていたわけではありませんでした。やがて、この男性は彼女にプロポーズします。彼女は結婚について、特に前向きではありませんでした。それでも彼女はプロポーズを受け入れました。その理由は、もちろん実家を離れて生活がしたかったからです。
彼女は会社を辞めて夫と共に本社の近くに新居を構えてそこで暮らし始めました。しかし、元々愛し合っていたわけでもない二人の結婚生活が上手く行くはずもありません。やがて彼女は夫と離婚しました。彼女は会社を退社していましたので、その土地で暮らす理由もありません。離婚した彼女はひとまず実家へ帰ることになりました。
実感へ帰ったこの方は語学を勉強して海外の会社へ勤めることを目指しました。彼女はやがてシンガポールの会社に採用されて日本を離れました。そこでの暮らしはとても満足のいくものでした。仕事でも評価されてすぐに昇給昇格を果たしていました。しかし、3年も経たないうちに父親が病気で倒れ、母親が自宅で介護をすることになりました。お父さんの介護はとても重労働です。しかも、病人を抱えて暮らすお母さんも大きな不安やストレスから体を悪くしてしまいました。彼女は悩んだ挙句、両親の状況を考えて実家へ戻ることにしました。彼女はお父さんを介護施設へ入所させることを考えましたが、要介護認定は病気の状態とは一致せずに入所することは出来ませんでした。
彼女はそれからも家を出て外で暮らす道を模索しましたが、そのたびに何かに邪魔をされるように実家へ引き戻されていたのです。(2)へ続く。