箱崎出口で首都高速道路を下りた私は、ここから茨城へ向かうのにいったいどんなルートを通るのかまったく見当もつきませんでした。ナビは水天宮から新大橋通りを東に向かうように指示が出ています。これは都心から千葉方面へ向かうことになります。千葉から茨城へ行くルートもありますので、そのまま指示にしたがいました。しかし、船堀橋を渡って荒川を越えると、環七を右折して南へ向かうようにガイドされました。ここから南へ行くと東京湾へ出ますので茨城とは明らかに逆方向です。しかし、信号で止まった時にポータブルナビを確認すると、それも同じように環七を右折するように指示が出ています。私はナビに示された目的地を確認しました。そこには最初に入力した茨城の住所が示されています。私は覚悟を決めてナビのガイドにしたがって環七を南へ進みました。するとすぐに長島町を右折して葛西橋通りに入るように案内されました。私はナビにしたがって葛西橋通りを西へ向かいました。そして荒川と隅田川を越えて茅場町まで来ると、交差点をナビの指示にしたがって右折しました。すると新大橋道りに入り水天宮へ戻ったのです。
私はここまで来て、このナビが私に何をしたいのかはっきりと理解しました。目的地は茨城の住所になっていますが、ナビは私を茨城へ案内するつもりはまったくありません。これらのナビにしたがっている限り、私は都内を何周も周回させられて、永遠に茨城に着くことは出来ません。私を無間地獄のようなループに閉じ込めて、茨城へ向かわせたくないのです。私はそこに、”ナビが単に誤作動して行先を間違えた”以上の意思を感じました。そして一瞬、鳥肌が立って、冷や汗が出ました。
私は駐車場のあるコンビニに車を停めました。そしてナビを切って、車のエンジンを止めて、一心不乱にマントラを唱えました。今必要なことは、茨城へ向かう道を探すことではなく、霊に対する対応だと気付いたからです。私は強い不浄霊を除霊するのと同様に車の中で強いマントラを唱えたのです。気が付くと40分程、車の中で印を結んでマントラを唱えていました。
それからエンジンを始動して、ナビを付けました。そして、目的地にこれから向かう茨城の住所を設定しました。すると最寄りの入り口から首都高速道路に入り、三郷ジャンクションを北へ向かって常磐道へ入る道が表示されました。時計を見ると時刻は3時になっていました。
私は高速道路を快調に飛ばして、何とか日暮れ前に目的地の家に到着しました。そして、予定通り、お祓いをして敷地に天眼石を大量に撒いて仕事を終えたのでした。