常盤塚は常盤姫が自害したとされる場所に建てられています。世田谷城址公園のある世田谷線の上町駅から電車で10分程の若林駅の近くに駒留八幡神社があります。その境内の中には常盤塚の他にもこの時処刑された12人の側室と常盤姫を含めた十三塚という祠もありました。ただこちらは環状7号線が建設されたときに取り壊されて今はありません。
常盤姫の父親の大平出羽守の居城は奥沢城です。常盤姫も吉良頼康の側室になるまでは、この城で過ごして白鷺をかわいがっていたのです。奥沢城跡は今は、浄真寺というお寺になっています。田園都市線の九品仏駅から歩いて3分の所にあります。浄真寺は3棟の3仏像に阿弥陀如来像がそれぞれ3体(合計9体)安置されていることから”九品仏”とも呼ばれて駅名にもなっています。浄真寺の境内には、白鷺が羽を広げたように見える美しい”鷺草”が夏には花を咲かせます。そこは”鷺草公園”とも呼ばれています。そして鷺草は世田谷区の花になっています。
常盤姫が自害する前に文を足に結んで奥沢城へ放った白鷺は、力尽きて死んだという説の他に、奥沢城の近くで狩りをしていた吉良頼康が、間違って撃ち落としたという説もあります。いずれにしてもその文を目にした頼康が、常盤姫の無実を信じて、姫の元へ駆けつけたものの、すでに自害していて胎児と共に亡くなってしまったようです。
私が上町に住んでいた時、家の前には世田谷城址公園があり、近くには常盤塚のある駒留八幡神社があり、奥沢城跡の浄真寺もそれほど離れてはいません。また、吉良頼康は2つの居城を構えていて、一つは世田谷城でもう1つは蒔田城です。蒔田は横浜市南区にあって、地下鉄蒔田駅は横浜市南区総合庁舎の最寄り駅です。その目の前にある横浜市立蒔田中学校は、私が3年間通った中学です。吉良家にも大平家にも特にご縁はありませんが、常盤姫の白鷺伝説を聞くと、何か親近感を感じるのです。
実際、駒留八幡神社や浄真寺には何度も足を運びましたが、境内で現代では見られないような、とても髪の毛の長い女性の後姿を見て、振り返るとこの女性が完全に視界から消えていたこと。また静かな境内で絹連れの音が聞こえてきたことがありました。また、嗅いだこともない良い香りが突然漂ってきたこともありました。
不幸な死を遂げた常盤姫の無念さは察してあまりありますが、その後、何百年間もこの地に住む住民たちに供養されてきたことで、今は子供と一緒にあの世へ上がって成仏しているように思います。霊の影響によって何かが見えたり音がしたり、臭いを感じることはよくあります。それが悪念を抱えている不浄霊ですと、目に映るものも音も臭いも非常に悪いものになります。ただ、駒留八幡神社や浄真寺では不思議な体験はしても、それは私を脅すものや霊の示威行為ではなく、むしろ気持ちを優しくさせてくれるものです。不幸な人生を乗り越えて、常盤姫やお子さんが幸せな来世を生きてくれることを願ってやみません。