私はこの女性に示されたスマホの画像でお父さんの波長を確認しました。そしてお父さんの魂がまだ、現世にとどまっているのかどうかを確かめました。死後数年経っていると、魂はすでにあの世へ上がり、輪廻転生の準備に入っていることが多いのです。死後数年経過しても魂があの世へ上がらないケースは、現世に対する執着が強いときに限られます。

 

お父さんの魂はこのときまだ現世にとどまっていました。現世に対する執着は、その理由がネガティブな場合は、極端に言えば不浄霊化して何百年もあの世へ上がれないこともあります。ただし、その理由がポジティブな時は、どれだけ生きている人を思いやっていても、愛情を注いでいてもあの世へ上がらなければならないのです。それが魂が輪廻転生する上での定めなのです。お父さんの魂も、もういつあの世へ上がっても良い時期でしたが、かろうじて現世にとどまっていたのです。

 

私はお父さんの魂と同調して、娘さんがお父さんの気持ちを知りたがっている思いを伝えました。するとお父さんは笑顔になって、

「あの子がそんなことを気にしているのですか」

と私に応えてくれました。お父さんは娘さんの名前を呼びながら、

「あの子は元々とても頭の良い娘でした。自分では姉にコンプレックスを持っていましたが、私から見れば努力家の姉よりも頭の回転は速く、理解力もすぐれています。ただ、少し頑張れば結果が出てしまうので、いつの間にか腰を据えて努力をすることをしなくなっていました。誉めればすぐに安心して力を抜いてしまうのです。だから私は娘には小さいときから厳しく接してきたのです」

お父さんはとても嬉しそうに私にそう伝えてきたのです。

「娘は私が姉ばかりかわいがっていると思っていたようですが、私がいつも考えていたことは、娘を伸ばしてあげたいという、その思いだけです。姉は誉めて伸びるタイプですが、妹は叱咤激励して伸ばしていかなければならないと思っていました」

お父さんはまるで自分の気持ちを確認するように、娘さんに対する思いを私に語り始めたのです。

「元々、娘は家庭的なタイプではありません。私が生きているうちは、私が娘を守れます。しかしいずれ私が死んだ後に、誰にも媚びずにしっかりと自分の力で生きていくためには、世の中を生きていけるだけの武器を持たせてあげたかったのです。それは学歴であれ、資格であれ、技術であれ、それを身に付けて社会へ送り出してあげたいと思いました。だから娘には厳しいことも言いました。でもそれで娘が伸びてくれるなら、私は別に嫌われても良かったのです。娘に感謝されることよりも、娘が幸せに生きていくことが私の望みですから」

お父さんはとてもやさしい顔で私を見つめました。

「そして娘はしっかりと私の期待に応えてくれました。安定した立派な仕事に就いて、生き生きと毎日を暮らしています。どうですか?シュンさん。本当に私の自慢の娘なんですよ」

お父さんはそれだけ私に伝えると、とても幸せそうに微笑みながら、安心したように私の前から消えていきました。

 

この女性は私の話を聞くと大粒の涙をたくさん流して顔を伏せました。きっと当人同士にしか分からない、たくさんの怒りや悔しさや確執、そして喜びや感謝が一気に胸にこみ上げてきたのでしょう。お父さんがスムーズにあの世へ上がらずに今まで現世にとどまっていたのも、私を通してこの言葉を娘さんに伝えるためだったような気がしました。

「お父さんはお姉さんよりも、むしろあなたのことを小さいころからたくさん思っていたようです。優しさと厳しさにあふれた素晴らしいお父さんですね」

この女性は私の言葉に「はい」と力強く答えると、スマホのお父さんの画像に手を添えなら、人目をはばからずにいつまでも涙を流していました。