シンクロニシティはスイスの精神科医で心理学者のユングが提唱した概念で、日本語では「同時性」とか「共時性」と訳されます。複数の出来事が意味的関連性を持ちながら、同時に起こることです。以前、このブログでも”ネブラスカの奇跡”を例にシンクロニシティについて述べたことがあります。アメリカのネブラスカ州にある教会が、あるときガス爆発によって建物のほとんどが吹き飛んでしまいました。そのとき、毎週その時間に教会に集まって聖歌の練習をしていた15人の聖歌隊のメンバーが、それぞれがまったく関連のない個別の理由によって教会に現れずに難を逃れたのです。聖歌隊に参加するような真面目なメンバーですから、それまでに練習をサボった人は一人もいませんでした。それが、この日、この時間に限って15人全員がおのおの別々の理由で教会を訪れなかったのです。
ユングの概念では、人間は意識の表層にある”顕在意識”の下に、無意識の領域である”潜在意識”の世界が広がっています。そして潜在意識のさらに下には、人間の共通認識の世界である”集合的無意識”の世界があるとされています。私が霊視をするときに、意識の底へと気持ちを集中していくと、その世界の中で他の人とつながることができます。これが集合的無意識の領域なのか、霊界なのか、或いは暗在系なのか、その定義は混沌そしていて明確ではありません。ただ、もし人間の共通認識の世界があるとすれば、誰かに働いた命の危険を知らせるインスピレーションは、この領域を通して他の人に伝わったとしても不思議ではありません。その結果、15人の聖歌隊のメンバー全員に、今日、教会へ行ってはいけないという意識が共有されて、それぞれが最も現実化しやすい理由によって教会に来ることがなたったと考えられます。
最近、私の周りでもシンクロニシティを感じさせる出来事がありました。先日お会いした方は、自宅の近くの同じ場所で、自分の母親と自分の子供が交通事故に遭って亡くなりました。そのため、何か悪い因縁因果があるのではないか。そしてもしかしたら自分もこの場所で命を落とすのではないかと心配して私に相談してきたのです。私は現場に足を運んでその土地や周囲の状況を探りました。しかし、その場所に特に霊的な障りがあるとは感じませんでした。不浄霊も地縛霊もいません。それでも現実に自分の母親と自分の子供が同じ場所で同じように命を落としているのです。
もっと身近な例を挙げると、友人や恋人同士でメールや電話をしたときに、何度掛けても同時になることがあります。私も以前、1日に2~3回しかメールをしないような友人でも、その2~3回がすべて同時だったことがあります。
聖歌隊に参加するメンバーは、宗教観や人生観が大きく離れていることはありません。親子や友人、恋人や配偶者も比較的近い考え方を持っている方が多いでしょう。そういったケースでは、集合的無意識の世界に、同じ刺激やインスピレーションは入りやすくなります。その結果、シンクロニシティがさまざまな形で発生しているのではないかと考えています。